イラク攻撃と湾岸戦争を同列に論じてはならない

 

今回の戦争は、近年アメリカが行ったこれまでの戦争、対ヒトラー、対日戦争、湾岸戦争などとは、性格がまったく異なります。
これらの戦争と一律に論じることは「絶対に」できません。

(1)
湾岸戦争などと異なり、対戦国であるイラクは、具体的な国際法違反をまったく行っておりません。
大量殺戮兵器の保持はあくまでも推測であって、(アメリカが国連の秩序を維持する用意があるならば、)戦争を開始するには、それを証明する必要があります。

イラクは、国連の査察の条件を守り武器排除の姿勢を見せ、国連も、協力姿勢を評価し、その査察の結果を見ようとしていました。

アメリカは、国連に加盟している以上、国連の中に留まりつづけるつもりならば、その権威を尊重し、最低でも査察結果を見るべきでした。

ヒトラー政府のように差し迫った大量虐殺の事実もなく、他国への侵略もないわけですから、国連のメンバーが納得行くような結果を待つ時間は十分にあるわけです。

わたしは、邪悪な政権に対するいかなる攻撃もよくない、と述べているのではなく、「なぜ、立てられた権威や約束を破ってまで性急に攻撃する必要があるのか」と問うているのです。

聖書は、「戦いを交える前に和解の使者を送れ」と書いています。

ブッシュのやり方は、和解の努力を十分にしておりません。それゆえ、「何か他の理由があるのではないか」との憶測が世界に飛び交っているわけです。



(2)
もしイラク国内の虐待されている自国民を解放することがアメリカの真意であるならば、なぜアメリカは数ある他国の抑圧体制に対して同じことをしないのか。

もしこの戦争が、対ヒトラー戦争のように正義の戦争(アメリカはヒトラーに資金援助していたのですから、これも茶番なんですけど)であるならば、アメリカはこの戦争が終わった後で、しらみつぶしに、人権抑圧体制を破壊するために世界中のあらゆる地域に戦争を仕掛けるはずです。

しかし、恐らくそうしないでしょう。

アメリカの目的は、中東でのプレゼンスの拡大なんです。

恐らく戦後アメリカは、連立政権という名の親米政権を作り、米軍基地を置くでしょう。

我々は、アメリカの「正義の戦争」を文字通り受け取ってはなりません。

アメリカは、ヒトラーやソ連、タリバンなど、自分でならず者を育てておいて、ある日「独裁者」「悪魔の帝国」呼ばわりし、叩き潰して、後に基地を作り、親米政権を作るというやり方を、ずっとしてきたのです。



(3)
現在アメリカを動かしているのは、ラムズフェルド、チェイニー、ウォルフォヴィッツらネオコン(新保守主義)と呼ばれる親イスラエル勢力です。

ネオコンが正式に発表している文章から、彼らの主張は次のようなものであることが分かります。

「合衆国は世界の善に向う力である。合衆国にはその力を行使する道義的な責任がある。その軍事力は支配的でなければならない。この力は全地球的に行使されるべきであるが、その利益と価値の追求を、誰の意見をも勘案せずに一方的に行なってよいのであって、双方向的な取り決めがあったとしても、それによって制約されたりしてはならない。この力は戦略上、イスラエルと同盟しなければならない。サダムは去らねばならない。なぜならばサダムはイスラエルの敵であり、サウジアラビアの敵でもあるから。大量破壊兵器を集め、使いさえしたのだから。」

私が湾岸戦争とイラク攻撃が違うという大きな理由は、湾岸戦争を指導していた人々はネオコンではなかったという事実にあります。

湾岸戦争において、中道派である父ブッシュは、国連の権威を立て、正式な手続きを踏みました。事実、イラクはクウェートに侵略しました。それゆえ、世界の人々は、アメリカの戦争を(その背後の腹黒い目的は別として)是認したのです。

しかし、ネオコンの人々は、米国には一方的に他国との協調を廃棄し、単独で行動する権利があり、このように行動するときに、他国は必ずついてくるという信念を持っています。

世論調査によると、彼らのこのような極端な行動(軍事的優位のあくなき追求、国連軽視、相互協約一般の軽視)は、一般のアメリカ人の支持を得ていません。彼らの多くは兵役についたことがなく、公職に選出された者も少なく、それゆえ、コモンセンスを持ったアメリカ人からの信任を受けているとはとても言えない連中なのです。

このような人々が立てた今回の政策と、これまでのアメリカの政策は根本的に「権威の尊重」という聖書的な価値観に関して決定的に異なっており、それゆえ、我々クリスチャンは、米国の行動に対して判断を下す上で注意が必要なのです。


日本では、情報がふるいにかけられているので、TV・新聞などだけの情報源では、判断は絶対に間違います。

即断してしまう前にいろんな人の意見や情報を吟味する必要があると思います。

 

 

03/03/20

 

 

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