十分の一について

 

<ご質問>

これまで、この点についてそれほど深く考えたことがありませんでしたが、十分の一というのは単純に収入の10%だと思ってました。

ところが、先生の主張では、国家が我々の所有の40%以上を奪い取っているため10%を超える分は泥棒の被害に遭った部分と見なすとあります。

そこで、以下の2点について、もう少しご説明を御願い出来ませんでしょうか。

聖書の該当個所も併せて御教示願えれば幸いに存じます。

(1)10%を超える分は泥棒の被害に遭った部分と見なすという事

(2)泥棒の被害に遭った分は十分の一に参入されない

いつも質問ばかりで恐縮です。

今回も基本的な問題ですが、しっかりと学びたいのでよろしく御願いします。

 

<お答え>

(1)国家は、義のしもべとして国防と治安の職務を主に委ねられています。福祉や教育、産業、金融などに関わるべきであるとは述べられていません。近代の大部分の国家は、1)理神論の国家機械説、2)進化論的国家器官説、3)ルソーの自然主義による民意中心主義、4)ヘーゲルの国家至上主義のミックスされた思想によって成り立っています。

1)は、国家は、機械のように自動的に動いており、ひとたびネジを巻けばうまく動いてくれる。そこに神の介入は必要ない、と考えます。ニュートンの理神論以来の思想で、フランクリン・ルーズベルトをはじめ、アメリカの中心的な国家観です。
2)は、国家を生物のように進化する有機体と考えます。生物の進化が自律的に進むように、国家も、神とは無関係に、自律的に進化発展します。国民はこの自律的発展に貢献しなければならないとします。
3)は、人間は自然の状態において正しい判断力を持っているのだから、超越的法などに頼らなくても、民意を発揮すれば国家はうまく運営されるとします。人間の堕落性を否定し、キリストの贖いも神の啓示も必要ないとします。
4)は、国家を「世界を歩く神」と見、神格化します。国家は国民に保護と便益を提供し、国民を国家に依存させ、国民から絶対的服従を要求します。人間は国家の似姿であり、それゆえ国家に貢献できない人間は本当の人間ではないとします。

近代の国家は、このように神排除の思想に基づいており、神に代わって人々に保護と福祉を提供する偽メシアなのです。国家はあらゆる領域に干渉し、それに口を出し、そこから税金を取ります。民間業者がやれば何分の一かで済むものを、コスト感覚のない役人がやるものですから、多額の税金を遣って結局失敗し、国の財政を破綻に導いています。そこに利権を狙う族議員がからんで国民の税金は特定の業者とその業者と癒着する政治家のふところに入ります。

聖書は国家の務めを限定しており、福祉や産業、文化、スポーツなどは、国家の扱う仕事ではなく、個人や家庭、教会の仕事としています。救済主としての国家像を捨てなければ、いくら増税しても、国の経済は破綻する以外にはありません。

聖書は、個人が自分の才覚と責任によって財産を管理して、社会が必要としている仕事を見つけ、創出し、技術を高め、必要な人や組織を助け、福祉を行うように命じているのです。

1サムエル記において、人々が神の直接支配を嫌って、王を求めたとき、神はサムエルを通して、「王はあなたがたを抑圧し、搾取するようになるだろう」と警告しました。その場合でも、王が徴集することになる税金は10%だけでした。

「裁きを行う王を与えよとの彼らの言い分は、サムエルの目には悪と映った。そこでサムエルは主に祈った。主はサムエルに言われた。『民があなたに言うままに、彼らの声に従うがよい。彼らが退けたのはあなたではない。彼らの上にわたしが王として君臨することを退けているのだ。彼らをエジプトから導き上った日から今日に至るまで、彼らのすることといえば、わたしを捨てて他の神々に仕えることだった。あなたに対しても同じことをしているのだ。今は彼らの声に従いなさい。ただし、彼らにはっきり警告し、彼らの上に君臨する王の権能を教えておきなさい。』サムエルは王を要求する民に、主の言葉をことごとく伝えた。彼はこう告げた。『あなたたちの上に君臨する王の権能は次のとおりである。まず、あなたたちの息子を徴用する。それは、戦車兵や騎兵にして王の戦車の前を走らせ、千人隊の長、五十人隊の長として任命し、王のための耕作や刈り入れに従事させ、あるいは武器や戦車の用具を造らせるためである。また、あなたたちの娘を徴用し、香料作り、料理女、パン焼き女にする。また、あなたたちの最上の畑、ぶどう畑、オリーブ畑を没収し、家臣に分け与える。また、あなたたちの穀物とぶどうの十分の一を徴収し、重臣や家臣に分け与える。あなたたちの奴隷、女奴隷、若者のうちのすぐれた者や、ろばを徴用し、王のために働かせる。また、あなたたちの羊の十分の一を徴収する。こうして、あなたたちは王の奴隷となる。その日あなたたちは、自分が選んだ王のゆえに、泣き叫ぶ。しかし、主はその日、あなたたちに答えてはくださらない。』民はサムエルの声に聞き従おうとせず、言い張った。『いいえ。我々にはどうしても王が必要なのです。…』」(1サムエル8:6

神ですら10%しか取らず、横暴な王ですら10%しか取らないのです。また歴史上最悪の専制国家であったエジプトですら徴税率は20%だったのです(創世記4726)。今日の国家がどれだけ法外な搾取を行っているかが分かります。

現在の日本政府が我々から徴集しているのは、ガソリンや酒税(ビールの45%が税金)、電話料金(理由不明な施設設置負担金72千円)やガス、電気などの保護独占企業の高額な料金、高速道路料金などの隠れ税金や法外な相続税(最高税率70%)を含めると、平均所得者でも50%を越えると思われます。

高額所得者になればこのことはさらに顕著であり、日本の所得税の最高税率は住民税を含め65%に対してアメリカでは46%程度(イギリスは40%)のため、高額所得者がアメリカなどに税金難民になることが後を絶ちません。海外移住すれば税負担を数千万円から数億円軽減することができます。

これが、「みんなの利益のために」というふれこみで徴集されているのですが、実際のところ、ほとんどが利権企業と官僚と政治家のふところに入り、無駄に遣われています。

「いやいや、税金があるから我々はほとんど無料で学校に行けたし、無料でサービスも受けられたではないか」という意見もありますが、私は、税率が下がればかえって教育費や様々な費用は減ると考えています。

税金を最高10%未満に抑えることによって、企業が会社として利用できる御金が増え、それを再生産に回せば税収はかえって増えるでしょう。海外からの投資も増えるでしょう(日本への投資は、世界中の企業の対外投資総額のわずか1%強しかありません。これは、対ベトナム投資よりも少ないのです。この最も大きな原因は、法人税の高負担にあります。法人税の実効税率(地方税も含め実際にかかる税金の負担割合)は4636%と国際的に突出しています。先進国の多くは30-40%前後で、途上国は15-30%程度とさらに低いのです。)

また、政府が首をつっこむ領域が減るので、それにかかる人件費や設備費が劇的に減ります。様々な規制も撤廃され、これまで経済的、政治的に手枷足枷をはめられていた企業家が自由に企業を起し、活動することができるようになれば、かえって税収は上がるでしょう。

現在の税制は、マルクス主義に強く影響されています。マルクスは、累進課税制度が採用されれば、共産主義社会への10のステップの1つは踏破されたことになる、と言いました(Karl Marx and Frederick Engels, Manifesto of the Communist Party(1848) in Marx and Engels, Selected Works, 3 vols.(Moscow: Progress Publishers, [1969]1977) cited in Gary North, Tools of Dominion, (Tyler: ICE, 1990))。

聖書は、富める者は貧しい者に分け与えよと述べていますが、国家に対して、強制的に金持ちの御金を没収し、それを分配せよとは命じていません。しかも大きな成功を収めた者はそれだけ大きな割合のお金を取られても仕方がないとも述べていません。あくまでも律法における十分の一の原則は、人を偏りみずに、一律10%です。

日本は、人間の浅知恵に頼らずに、聖書の国家観に立ちかえるべきでしょう。人間の知恵は、一見するとよいように見えますが、実は大きな落とし穴があるのです。ソ連や東ドイツや北朝鮮の結末を見れば明らかです。

 

(2)税金を支払うベースが、泥棒の被害にあったものを除いた額であるというのは自然のことです。神は「『収穫』の十分の一」(申命記1422)を捧げよと述べられたのです。畑から聖所に持ってくる間にその40%が盗まれたならば、それを「収穫」とは呼べないのは明らかです。

 

 

02/03/19

 

 

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