なぜアメリカのクリスチャンは戦争を抑止できないのか?

 

日本の40倍ものクリスチャン人口がありながら、なぜアメリカのクリスチャンは政治に影響を与えることができないのだろう。

私がミレニアムのHPにおいて繰り返して主張してきたように、その原因の一つは、アメリカのクリスチャンのナイーブさにあった。

彼らは簡単に騙されるのである。

今回のイラク戦争に対してもろ手を挙げて賛成したアメリカクリスチャン同盟などはその典型である。

かつて『ダラス及びフォート・ワース・ヘリテージ』紙の編集発行者であり、現在、コラム・デオ・アカデミー(テキサス州ダラス市近郊)の歴史学部長ジョン・J・ドワイアーが、「でも彼らは私たちよりも多くの情報を持っている」(2003年8月8日)という題で、イラク戦争に対する福音主義者の対応について次のように述べている(http://www.lewrockwell.com/orig3/dwyer2.html)。



「でも大統領は我々が持っているよりも多くの情報を持っている。我々はイラク戦争に関して、大統領の知恵に信頼しよう。それに、ブッシュは、再生したクリスチャンだからね!」

読者は、ここ数ヶ月、このような文句を、とくに保守的な福音主義のクリスチャンたちの間で繰り返し聞いたことだろう。しかし、我々は、今、次のような疑いにさいなまされている。

ひょっとして、我々は、騙されていたのだろうか?

体制翼賛的で、視聴率や広告主の意向を気にする主要メディアや、好戦的な保守派やクリスチャンのラジオ番組によって、我々はミスリードされていたのだろうか。

そして、我々の友、保守派クリスチャンであるジョージ・W・ブッシュも我々を騙していたのだろうか、と。

最悪なのは、講壇から語る説教者たちが、我々の世代――そして、我々の子供達の世代――にとって大きな意味を持つこの問題について、火のように激しく明瞭な、預言の言葉を吐かなかったことである。

しかし、どんなに我々の教会の指導者たちが無能でも、我々個人個人は、「蛇のように聡く、鳩のように素直」であるべきである。我々にはそのような責任がある。

知恵を得るには、わが国の歴史を調べる必要がある。それは、よりよい未来を築くためである。

アメリカの歴史をひもとくと、大統領はしばしば国民を欺き、騙し、ミスリードしたということが分かる。事実を明らかにすれば、国民を戦争に駆り立てることができない場合に、大統領は国民に対してウソをついたのである。

今回のケースでは、大統領とその側近たちは、このようなミスリードがあまりにも多いため、彼らの誤謬をすべて網羅することは、ほとんど不可能である。

保守派コラムニストのエリック・マルゴリスは、これらのウソのほんの一部を紹介している。
イラクは「死のミサイル」や、移動式細菌兵器研究所を所有し、スカッド・ミサイルを隠し持ち、アルカイダへのパイプラインや、化学兵器の地下貯蔵庫を持ち、アメリカにばらまくための天然痘や炭素菌を所有している、と。そして、ニジェールからウラニウムを買って、秘密の核兵器開発を行おうとしていた、と。

大統領自ら、戦争前夜に「イラク政府は、これまで史上最強の殺人兵器のいくつかを所有し、隠し続けている」と語ったのである。

このようなウソに騙されて、我々アメリカ国民は、我々の若者の血と金を犠牲にし、無数のイラク兵士と市民を殺害することに同意したのである。

しかし、これは何も新しい作戦ではない。7月になるとテキサスを襲う熱波のように簡単に予測できることなのである。フランクリン・D・ルーズベルトは、ヒトラーとナチスに参戦するために、野蛮な対日敵視計画を練り上げた。リンドン・ジョンソンは、北ベトナムを攻撃するためにトンキン湾事件をでっち上げた。ビル・クリントンは、モニカ・ルインスキー事件を目立たなくするために、セルビアの民族浄化と虐殺事件に人々の耳目を集めようとした。アメリカの大統領が戦争を望めば、戦争は始まるのである。

トマス・フレミングのベストセラー『勝利の幻影―第一次大戦のアメリカ』では、敬虔で善意の持ち主である南部出身の大統領が、十分な時間と資力を用いて人々を戦争に駆り立てることに成功した過程を明らかにしている。

ウィルソン・アンド・カンパニー社は、ベルギーにおいてドイツ人が犯したという残虐行為を宣伝した。野蛮な「フン人[訳注:ドイツ人の蔑称]」が若い男性の手や若い女性の体の一部を切り落とし、多数の女性をレイプした、と述べた。しかし、有名な弁護士クラレンス・ダローが、独自の調査を行ない、これらの話がでっち上げであることを暴露した。

・・・

たしかに、ジョージ・W・ブッシュとその側近たちは、彼らの先輩たちと同じく、我々よりも多くの情報を得ていたのである。それなるがゆえに、今回の戦争に対する彼らの罪はますます大きなものとなっているのである。


騙される人間に共通しているのは、「すけべ根性」である。

真理を知るよりも、偽りを信じるほうが自分にとって利益があるからである。

「真理を主張することによって生じる摩擦を避けたい」、「この地上生活においてできるだけ迫害を避けたい」、「この世界を御国と変えるには犠牲を払わなければならないので、世界はまもなく終わって携挙されると信じよう」、というアメリカのクリスチャンの心理は、相応しい神学(ディスペンセーショナリズム)を求めてきたのである。

このようなクリスチャンが数千万人いても、戦争の抑止という点で何の役にも立たないのは明らかである。

彼らに期待するのは間違いである。


 

 

2003年08月08日

 

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