再建主義は理想郷を作ろうとはしていない


メールありがとうございました。
こちらこそどうもありがとうございます。

<fms様>

再建主義政権が地上に発足した場合、私が懸念するのは、あのホメイニによるイラン革命の時みたいに、革命政権が社会をめちゃくちゃにするのではないか、ということです。

革命政権が発足した当時のイランでは、兵士が勝手に少女を捕まえて輪姦し、用が済んだらその少女を姦通罪で告発、処刑するというようなことがたびたびあったと聞きます。

何も知らない民衆は、少女が処刑されても、イスラム法が厳格に執行されたとしか思いません。

また、アイルランドでは、マグダレン修道院というのがあって、一応建前は売春婦を矯正するところらしいのですが、実際は無実の少女たちが無理矢理収容されて奴隷のような扱いを受けていたといいます。

無実というのは、例えば、寝室で兄が妹をレイプします。悪いのは兄のほうなのですが、家族は妹が兄を誘惑したとして妹を罰し、世間体なども気にして、妹をマグダレン修道院に入れるといったことがあったそうです。修道院では粗末な食事しか与えられず、シスターたちに奴隷のごとくこき使われる日々が続いたといいます。この環境で病死した少女も少なくないと思われます。マグダレン修道院は1960年代頃まで、そのような非人道的な収容施設だったようです。

宗教的な政権や、宗教的な社会が実現しても、相変わらず民衆レベルでは悪意が支配している場合があり、その悪意は宗教的システムを利用して人を罪に陥れ、多くの人々がそのシステムの犠牲になることがあります。

共産主義政権でも、似たようなことがあったと思います。

私が神政政治について抱く懸念は、そんなところにあります。

fms

<tomi>

(1)
ホメイニの政権は、民衆の大多数がそれを望んでいたというものではなかった、と最近イランの宗教指導者が述べていました。

ホメイニにしても、ボルシェビキ革命にしても、少数の人々が、無知な大衆を煽動して大きな運動にし、政権を力づくで奪取した。これは、「力に対する信仰」による社会変革、つまり、革命です。

再建主義は、革命を否定します。まず、人々が自発的に聖書を神の啓示として受け入れることなしに、政権は実現しません。つまり、まず、社会にクリスチャンが増えて、社会の文化的な趨勢がキリスト教的になり、法律面でも聖書による体制を自発的に望むような時代にならなければならないと考えます。

なぜならば、キリストは、「すべての国民を弟子とせよ。バプテスマを授け、私が命じたすべてのことを守るように教えよ」といわれたからです。

バプテスマを受けるのは、本人の意思です。無理やり嫌がる人の体を押さえつけてバプテスマを授けることなどどの教会においてもしません。

神は、人々がまだ聖書的体制を望んでもいないのに、少数者の武力制圧によって社会をトップダウン式に変えることを望んでおられません。

(2)
ホメイニの兵士たちが強姦したのは、その強姦した兵士の問題であり、また、それを許した革命軍の責任です。

聖書は、強姦者を死罪と定めているのですから、このような逸脱を聖書の体制否定の理由にはできません。

(3)
アイルランドのマグダレン修道院で行われたことは、その修道院の人々が違法なことをしていたことが問題です。もしアイルランドの統治者がそれを許容していたのであれば、その統治者が無能であったということです。

キリスト教という名がついているものが、ことごとく善だけを行う、ということは不可能です。キリスト教とは名ばかりの人々がキリスト教国家の中にもいて、聖書の教えに反することを行うことは歴史的にもありましたし、これからもあるでしょう。

聖書は、「キリスト教の体制、国家になれば、悪は根絶されるだろう」などと少しも言っていないのですから、そのような「逸脱」を見て、体制そのものの欠陥を指摘することはできません。

もし、この論理に正当性があるならば、今日のヒューマニズム体制についても、同じことが言えます。

しかし、体制論は、どのようなものであっても、「悪意を完全除去することができる」という前提に立つのではなく、「いつの時代にもどのような体制にも悪意は存在する。その悪意に対して体制側はどのような処罰を行って、その悪意の発現を最小限度に抑えられるか」ということを問題にするのです。

再建主義は、「悪意がまったく存在せず、悪意を持つ人間が、体制を利用し、他者を抑圧搾取することも根絶される。」などと言っておりません。

再建主義が提起している問題とは、「悪意を持つ人間が権力を持ったり、体制を利用して悪事を行ったりするようなことのないことを目指し、そのような悲劇を最小限度に抑えるためには、システムをどのように構築するか」ということです。

再建主義は、悪意の消滅した理想郷を作ろうとはしているのではありません。

 

 

2004年2月14日

 

 ホーム

ツイート

 



millnm@path.ne.jp