イラク・パレスチナ問題の本質的解決法

 


現在、パレスチナの土地を占領し、それを拡大しようとしている人々、そして、それに反対するアラブの国々を米軍の力によって押さえ込み、イラク攻撃を実行し、中東一帯を「非イスラム原理主義化」しようとしている人々に共通する本質的な間違いは、

「力の宗教」を信じているという点である。

イスラエルのユダヤ人もアメリカ政府も「力があれば世界を変えられる」と考えている。ネオコンはその典型である。

しかし、聖書の中でイエス・キリストは、「剣を取る者は、剣によって滅びる」と言われ、「力の宗教」の一種である武力拡張主義、帝国主義を否定された。

そして、本当の覇権拡大の方法をお示しになられた。

「柔和な者は地を相続する。」

謙遜な者、神に依存し、人間の力に依存しない人々こそ、本当の覇権拡大者である、と。

イエスの時代、イスラエルはローマ帝国の属州として屈辱的な立場に立たされていた。

その屈辱の支配を跳ね返して、ソロモンの時代のような「栄光のイスラエル」を回復するために、武力闘争、革命を行おうという機運が高まっていた。

しかし、そのような血気盛んな人々に向かってイエスは、逆のことを言われた。

「右の頬を打たれたなら、左の頬を向けよ」「1ミリオン行け、と言われたら、2ミリオン行きなさい」と。

つまり、ローマ帝国に対して革命を起こすのではなく、むしろ、自らを低くして、従順に従え、と言われたのである。

ユダヤ人は、自らを選民と呼び、異邦人を犬と呼んでいた。その卑しい異邦人であるローマ人から、理不尽な暴力を受け、強制賦役を課せられることは、誇り高きユダヤ人にとってがまんがならなかった。

イエスが問題にされたのは、ユダヤ人のこのような傲慢である。

ローマの属国となったことが本当の問題なのではない、むしろ、祝福されるはずであったイスラエル国を属国にまで落とすようなことをした「心の態度」が問題なのだと。

神は申命記において「律法を守れば祝福され、世界のリーダーとなるが、律法を破れば呪われ、属国とされる」と宣言された。イスラエルが属国化したのは、軍事力が弱かったためではなく、律法に逆らったためなのだ。

「罪を犯しても、裁かれることはない。神は眠っているのだから。」と、高ぶって神を無視し、悪を行ったことが本当の問題だったのだ。この態度を悔い改めるよう数多くの預言者が送られたが、彼らは預言者を殺し、迫害した。

イエスは、「自分の息子なら敬ってくれるだろう」ということで神がお送りになった最後の使節だった。しかし、ユダヤ人は彼をも十字架につけて殺してしまい、ついに、裁きが下った。紀元70年に、神殿は崩壊し、ユダヤ人は世界中に離散し、イスラエル国は滅びた。

ユダヤ人はそれでもなお、ローマ帝国に抵抗し、死力を尽くして戦ったが、ついに、マサダの要塞にて全滅した。

このように、ユダヤ人の失敗は、問題を力で解決しようとし、倫理的に解決しようとしなかった、ということにあった。もしユダヤ人が御心を記した律法に忠実になり、悪を止めれば、栄光を回復できたはずである。しかし、彼らは、悔い改めることを拒み、御子すらも殺してしまい、自分が「矯正不可能」であることを図らずも証明してしまったのである。

現在のイスラエル政府やユダヤ人は、マサダの戦士たちを英雄視している。彼らは、「力の宗教」を本質的に捨てていないのである。だから、彼らは、武力によって「アブラハムに約束された土地」を回復しようとし、それに逆らうパレスチナ人を弾圧し、パレスチナ人を支持する国家を打倒するためにアメリカ政府内でロビー活動を行ない、米軍をイラクに派遣し、無理やりフセインを政権から引き摺り下ろしたのである。

しかし、力で覇権を拡大する方法は、イエスが言われたように、自らを滅ぼす方法である。

もしアメリカが、今回のイラク戦争において「きれいな勝利」を収めたかったならば、ブッシュ大統領は、「大量破壊兵器」とか「テロ」などを大義名分にするのではなく、「イラク国内における言語道断の人権侵害」を世界に訴えればよかったのである。

おびただしい数の人々がフセインによって虐殺されたのだから、外国勢力がフセイン政権を倒す正当な理由はあったのだ。

しかし、今回の戦争準備において、ブッシュ大統領は戦争の正当性に十分に配慮しなかった。なぜか?

傲慢だったからだ。傲慢すぎて、「こっちには世界を敵に回しても勝つだけの軍事力があるのだ。そんな大義名分にこだわる必要はない」と先を急いだわけだ。

ここで、彼は決定的な失敗を犯したのだ。

大義や名分なき戦いにどうして神が助けの御手を差し伸べるだろう?

大義や名分なき戦いにどうして諸国民が賛同するだろう?

力にだけ訴える者は神に呪われる。

主はこう仰せられる。「人間に信頼し、肉を自分の腕とし、心が主から離れる者はのろわれよ。」(エレミヤ17・5)

イスラエル政府、ネオコン、ブッシュ大統領、そして、ブッシュ大統領を支持する米宗教右派のクリスチャンたちが犯している決定的な間違いは、「力の宗教」を信じているというところにある。

イラク問題、パレスチナ問題の真の解決法は、力への信頼を捨てて、神の御前にへりくだり、倫理的解決を求めることである。

ユダヤ人は選民意識を捨て、イエス・キリストを主として受け入れ、武力拡張主義を捨てることである。

ネオコンやブッシュ大統領は、軍事力を万能視するのを止め、「アメリカは国際協調を無視し、単独で行動する権利があり、邪魔者の政権を転覆してもよい」などという傲慢な思想を捨てることだ。


柔和な者は幸いです。その人は地を相続するからです。 (マタイ5・5)

 

 

2003年12月7日

 

 ホーム

ツイート