救世軍山谷大尉の再建主義論に反論する5

 


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世俗的民主主義国家であるアメリカでは、自由を重んじますので、上記のような考え方が広く一般に受け入れられるわけは、当然ありません。今後アメリカで再建主義が支配的思潮になるとはとても考えにくいのです。

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Y氏の見解をまとめると次のようになります。

「旧約律法の下にいたイスラエルは『レイプ、殺人、誘拐、堕胎、異端、冒涜罪、魔法、魔術、占星術、姦淫、近親相姦、親を殴ること、矯正不能な非行、婚前交渉』を禁止され、死刑に怯える悲惨な奴隷社会であった。現在の世俗民主主義のアメリカは、このようなことを許される自由な社会だから、旧約律法を適用されるような体制になりたいとは思わないだろう」と。

この考えには、いくつか重大な間違いが含まれています。

(1)旧約律法の下にいたイスラエルは、自由を奪われた奴隷社会だった。
(2)現在の世俗民主主義のアメリカは自由である。
(3)旧約律法が社会に適用される体制に戻りたいと人々は思わない。


(1)
もし、旧約律法の下にいたイスラエルが不自由な奴隷社会であるならば、「神は人々から自由を奪う奴隷主だ」ということになります。

しかし、聖書は、そのようなことは少しも述べていません。

旧約律法の下にいたイスラエルは、「エジプトの圧制から救われた自由人」だったと述べているのです。

「…主は、力強い御手をもってあなたがたを連れ出し、奴隷の家から、エジプトの王パロの手からあなたを贖い出された。」(申命記7・8)

そして、なぜ神がこのような贖いを行われたかと言えば、それは、「主があなたがたを愛されたから」(同7・8)だ、というのです。

つまり、「旧約律法の下にいた人々は、主の愛によって、奴隷から救われ自由を与えられた人々だった」と、聖書は語っているのです。

お分かりでしょうか。

聖書は、「旧約律法は、自由の法だ」と述べているのです。

しかしある人は、次のように言うかもしれません。

「え〜っ! だって、『レイプ、殺人、誘拐、堕胎、異端、冒涜罪、魔法、魔術、占星術、姦淫、近親相姦、親を殴ること、矯正不能な非行、婚前交渉』を厳禁されていたんでしょう? どうして自由なんですか?」と。

この人は、罪を自由と誤解しています。罪は自由ではなく、奴隷なのです。

「罪を犯す者は、罪の奴隷である」とイエスが言われたとおりです。

レイプ、殺人、誘拐をする人々は、自由人ではありません。彼らはサタンの奴隷です。

また、これらの罪に対して重罰を課さない社会は、レイピストや殺人犯、誘拐犯を野放しにするので、遵法的な市民の自由と安寧を阻害します。人々は、安心して外を歩くことができません。

「堕胎、異端、冒涜、魔法、魔術、占星術、姦淫、近親相姦、親を殴ること、矯正不能な非行、婚前交渉」を行う人々も自由ではなく、奴隷状態にある人々です。

今日、ポルノが巷に氾濫し、婚前交渉が当然のことになっていますが、これらが自由でよいと考えている人は、ポルノや婚前交渉や姦淫などによって、堕落しすぎて精神を乱されたか、もしくは、それらの強烈な束縛の力を知らないからです。または、このような不道徳なものがない健全な社会にひろがる愛情を知らないからです。

聖書は、「罪がはびこると愛が冷える」と述べています。

私が小中学生の頃には、ポルノはほとんどありませんでした。ポルノが書店やコンビニなどで売られておらず、不品行がはびこっていない時代の日本と比較すると、今日の日本に私は愛を感じることができません。

援助交際や、不倫がはびこる今の世相を見て、「少女たちは自由にのびのび生き、青春を謳歌している。大人も自由に恋愛を楽しんでいる。なんてすばらしい愛のある社会だろう!」と感じているのは、よほど堕落して道徳的に無感覚になり、精神に異常をきたした人々だけです。

正常な人々は、このような乱れた世の中を憂い、嘆いています。

旧約律法は、自由で愛のある社会を保全するためにある「自由の法」なのです。それは、神が我々が罪の束縛から解放されて、自由と安全と愛の社会に住むことを望んでおられるからです。


(2)「現在の世俗民主主義のアメリカは自由で」はありません。

殺人やレイプが横行し、ポルノや麻薬や堕落がはびこる今のアメリカは、自由ではありません。

キリスト教が社会を支配していた時代のアメリカを知る人々は、ヒューマニズムの自由主義思想によって倫理を破壊された今の惨状を嘆き、治安の不安から行動の自由を妨害されています。

(3)それゆえ、「旧約律法が社会に適用される体制を作りたいと人々は思わない」とは断言できません。

アメリカ社会は、神の法を捨てて、人間の目から見た自由を追求すると、かえって人間は不自由になるということをいずれ悟るでしょう。

人々が「自由」というものを誤解していたことに気づくのに時間はそれほどかからないでしょう。

 

 

2004年1月3日

 

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