プレ・ミレの千年王国論は体制変革後のグランドデザインがない革命的教説である

 


「建国義勇軍」とかいう右翼の団体のリーダーが逮捕された。

彼らのパンフレットには「今は、破壊の時です」と記されていた。

これは、テロリストの体制改革の方法を示している。

つまり、「まず破壊しよう」というのである。

そして、その後については「なんとかなる」と考えるのである。

フランス革命もロシア革命も同じであった。「まず革命を!」と叫んだが、いざ旧体制を破壊した後に、いったいどうすればよいか考えていなかったのである。

当然国内は混乱に陥る。革命体制ができた後に血の粛清が待っていたのである。

こういうテロリストのやり方は、「サタンの無責任」を反映している。

サタンは、人間に行動を起こさせるが、もともと彼は人間のことなど心配していないので、「あとはおまえたちで何とかしろ」と突き放すのである。

ブッシュ大統領のイラク戦争も同じだ。ブッシュ大統領を動かしたネオコンの連中は、体制転覆の後の統治について心配していない。

W・クリストルなどは、「もっと他国にも侵略せよ」とまだ言いつづけている。

R・パールは最近「イラク侵攻は国際法違反だった」などと言っているのだ。つまり、「イラク侵攻は犯罪行為だ。しかし、我々の場合、犯罪行為も許されるのだ」と言っているのだ。

ウォルフォヴィッツは、「大量破壊兵器が結局見つからなかったとしても、イラクの人民が解放されたのだからいいじゃないか。」と開き直っている。

アメリカの政治を担った先輩たちが、ブッシュ大統領に「占領後が大変だからやめとけ」と忠告したにもかかわらず、後先のことを考えない連中の計画にのって無謀な賭けに出た。

アメリカクリスチャン同盟も、プレ・ミレという「後はどうにかなる」的神学に基づいて彼の後押しをした。

プレ・ミレは、再臨の後の支配体制についてまったく何も対策がない。

「とにかく、キリストが再臨すればいいのだ。後はキリストが何とかしてくださる」と言う。

これは、「まず破壊だ」という建国義勇軍や共産革命家と同じ発想である。

プレ・ミレにおいて、「再臨」は「革命」とほとんど同義である。

体制変革後の統治のグランドデザインがまったく存在しないからである。

キリストが再臨した後、復活体のクリスチャンが統治者に任命されるのだが、10億のイスラム教徒たちをどうやって治めるのか?

「いやいや、彼らでも復活体のクリスチャンの姿を見れば、キリスト教が正しかったことが分かり、従順に従うだろうから」というだろうか。

しかし、聖書は「たとえ誰かが死人の中から復活しても、不信仰者はけっして信じようとしない」と教えている。

彼らが「我々はキリストが王であることを望まない」と連呼し、自爆テロを起こしたら、再臨のキリストはどうなさるのだろうか。

復活体のクリスチャン統治者に命じて「軍隊を常駐させ、治安にあたれ」と言うのだろうか。

これじゃあ、イラクと同じように泥沼化しないか?

「いや、キリストは全能なのだから、彼らを回心させるだろうから」という言うだろうか。

「それならば、今宣教師が人々に福音を伝えていることは無駄なのか?」という問題が起こる。

「もうすぐ終末が来て、再臨だ。その時になれば、キリストは全能の力を発揮してイスラム教国の人々を回心させる」というならば、今スーダンなどイスラム教国に宣教師を派遣して、命がけで伝道させているのは無駄だということなのか?

それとも、「いや、イスラム教国の人々は、雲に乗ってやってきたキリストの威光を目の当たりにして、恐れおののき、ひれ伏して拝むだろう」というのか?

これだと、「なぜキリストは、初臨の時にそれを行わなかったのか?」という疑問が起きる。

なぜキリストは、変貌の山において3人の弟子にしかご自分の本当の姿を啓示されなかったのか?

もしくは、復活体になられたキリストは、なぜ弟子たちの前にしか御姿を顕現されなかったのか?
もし顕現されていれば、世界支配は一挙に実現したではないか?
プレ・ミレ千年王国は、すぐに実現したではないか?なぜ2000年も待たねばならなかったのか?

神は、信仰によらずに、力とか威光で人々をひれ伏せさせることを望んでおられないのだ。

聖書において「威光による顕現」は、「裁きの時」だけである。栄光の御姿を啓示されるのは、死後か、最後の審判の時だけである。

それ以外は、「宣教の言葉の愚かさ」によってご自身を啓示されるのである。

プレ・ミレの千年王国論は、「へりくだって、幼子のように信じる者にしか神はご自身を啓示されない」という聖書の原則を否定する教えである。

プレ・ミレの千年王国論は、体制変革後のグランドデザインがない「革命的教説」である。

 

 

2003年12月24日

 

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