イラク攻撃の愚かさ

 

ゲイリー・ノースがhttp://www.lewrockwell.com/north/north165.htmlにおいて、イラク戦争の愚かさについて語っている(2003年3月7日)ので、要約してご紹介する。



200年の間、合衆国は、自由の旗手として世界の人々からきわめて大きな信頼を集めてきた。この国は、抑圧された人々の権利の擁護者として認められてきた。しかし、他国を侵略し、しかも、その国にダメージを与えることができないという事実が明らかになれば、十億の回教徒たち、及び、おそらく同数の非回教徒たちは、今回の軍事行動を不当な拡張と見なし、ウッドロウ・ウィルソンの民族自決権の侵害と見なすだろう。

協力は、ただで手に入れられるものではない。もしそれを手に入れたいならば、人々の自発性を尊重しなければならない。人々に自発的に協力してもらうならば、その代価は最小に抑えることができる。しかし、人々に協力を強制するならば、それは非常に高くつく。過去のすべての帝国が結局弱体化し、滅亡したのは、協力を得るのに高い代価を払ったからである。

アメリカと世界との間の協力関係は、貿易によって築き上げられている。しかし、超大国の攻撃に対抗する国を先制攻撃することは、合法的な活動とは認められないだろう。もしサダムが我々に対して大量破壊兵器を使用しなければ、我が政府は、[大量破壊兵器はなかったではないかと非難され、]道義的基盤と面目を永遠に失うことになるだろう。

アメリカは、侵略者と見なされるだろう。イラク市民が広範囲において武力抗争を行えば、合衆国が失うものは、兵士の命だけではすまないだろう。

国際協調は消失するだろう。一夜にしてではなく、ゆっくりと、しかも、確実に。いじめっ子が好きな者は誰もいない。人々は、レジスタンスの技術を着実に向上させていくだろう。

アメリカは、すぐに八方ふさがりの状況に陥るだろう。我が軍が一方的な勝利を勝ち取るならば、侵略の大義名分――大量破壊兵器の存在――は消失するだろう。イラクが大量破壊兵器(VXガス)を使用すれば、我が軍にはきわめて大きな損失が出るだろう。勝利の代償は、1991年の時よりもはるかに大きくなるだろう。もし、市民が命がけで抵抗するならば、軍の士気は崩壊するだろう。自分の家族を守るために戦っている人々を殺すことは、兵士にとって名誉でも何でもないからだ。

イラク戦争に勝利するのにかかる費用はどれくらいだろう。ブッシュ政権の主席経済顧問ローレンス・リンゼイは、1000億ドルから2000億ドルと見積もった。あまりにも大きな数字を出したために、彼は解雇された。出世志向の人々はこのことから教訓を得た。管理予算事務所長は、いかなる根拠も提示せずに、500億ドルから600億ドルという数字を出した。

しかし、この数字は、1991年の湾岸戦争でかかった600億ドル(現在の価値にして800億ドル)を基準に出されているが、この戦争において、アメリカが支出した金はきわめて小さかったのである。その大部分をサウジ・アラビアやクウェートや日本が肩代わりしてくれたのである。イラク戦争の戦費のほとんどはアメリカが支出するのである。

財務省の最近の報告によれば、2003年度の最初の4ヶ月の連邦政府予算は976億ドルの赤字である(1年前の同時期のそれは、84億ドルの黒字だった)。まだ戦争がはじまってもいないのに、である。

アメリカの侵攻により、アラブの国々の体制は弱体化する、と予測する人々はたくさんいる。私はこの予測がどれほど正確であるか知らない。しかし、いくつかのことは明らかである。ほとんどの回教徒たちは、この戦争に反対しており、テロリストが育つ土壌は確実に醸成されるだろう、ということだ。

イラクの抵抗が強ければ、株価は低迷するだろう。選挙民は、戦争が長引くことを受け入れまい。バグダッドを包囲して、人々が餓死するようなことにでもなれば、アメリカに対する非難はますます強くなるだろう。そして、十億の回教徒たちの敵意を集めることになるだろう。

アメリカ人は、1991年のストーリーの再現を期待している。しかし、戦争に勝つために払う代価は、きわめて大きなものになるだろう。世界の人々は、この戦争の正当性を疑問視するだろう。そして、この国際世論は、すぐさま国内の浮動票の動き(2004年)に反映するだろう。大量破壊兵器は発見されないだろう。発見されなければ、すなわち、この戦争の目的が、石油の略奪にあり、オイルパイプを開いて価格を米国の意のままに調整することにあった、ということが明らかになるということである。

戦費が多くなっても、少なくなっても、大統領は正当性を失うだろう。

戦費が少なければ、「結局、大量破壊兵器はなかったではないか。」と言われ、戦費が多くなれば、「戦費はかからないと言ったではないか!」と言われて。



(Gun Ownership in Iraq by Gary Northより)




 

 

2003年07月25日

 

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