ヴァン・ティルは後千年王国論者であった


ヴァン・ティルは明らかにポスト・ミレである。

アウグスチヌスについてヴァン・ティルは次のように述べた。


アウグスチヌスの歴史思想は、概して、キリストにあって神が万物においてお示しになった御心の考察を通じて得られたものと見なされている。この世においてキリストが徐々に勝利されるということを幾分かでも、また、最も優れた方法で確証するために、アウグスチヌスは、この壮大な思想を通じて、神学のみならず、思想と歴史においても改革が進行していることを指し示したのである・・・。(Christianity in Conflict, vol., 1, pt. 3, 169.)

この文章において、「この世において」という節に注目すべきである。
ヴァン・ティルは、明らかにアウグスチヌスを「後千年王国論者」と見、その思想を肯定的に評価していることが分かる。

また、グレッグ・バーンセンによれば、

ヴァン・ティルは、歴史の終末を超えてさらに続く勝利が来る前に、現在において、我々は「勇気を奮い立たせ、神がお造りになったこの宇宙から悪を完全に取り除く計画に着手しなければならない・・・。我々は、目標に向かって前進しているのである。」(Defense of the Faith, 82)と教えた。

後に、彼は次のように述べた。

さらに私が知るところによれば、キリストが教会と御民を救われたのは、彼らが世にとって祝福の基となるためである・・・。救われるべきは、『この世』である。サタンと地獄の全勢力は、キリストが確立し、また、確立しつつある天の御国に勝つことはできない。(Case for Calvinism, 133)

聖書の教えに従えば、・・・この世界において起こるあらゆる事柄において、キリストは、サタンの王国を滅ぼし、御国を建設しておられるのである。・・・神は、人間に世界を従えるという使命をお与えになったのである。この使命は人間の「文化命令」と呼ばれてきたが、非常に適切な名称である。(Protestant Doctrine of Scripture, 103.)

(Greg L. Bahnsen, Van Til's Apologetic, (Phillipsburg:P&R, 1998), 21n.)

しかし、残念ながら、ヴァン・ティルは、ある特定の千年王国論を支持したり、表明したりしなかった。(ただし、ポスト・ミレに基づくグレッグ・バーンセンの黙示録講解のテープシリーズ(Mt. Olive Tape Library の”Supplement Catalog”[April 1980])を好意的に評価したが。)

ゲイリー・ノースは、ヴァン・ティルのことを「自覚的な無千年王国論者」と呼び、彼が歴史に関して悲観的な未来観を持っていたと言うが、それは、おそらく曲解であろう。

ヴァン・ティルは、実質的な再建主義者であった。

・・・しかし、その思想と文化の歴史に関する広範な研究と分析において、ヴァン・ティルは再建の精神を持っていた。「キリストを信じる者が十字架の兵士としての責任から逃れることは、まったく不可能である。・・・サタンは退き、キリストは支配しなければならない。」(Christianity in Conflict, 1:ii)
(Ibid., 22n.)

再建主義は、ヴァン・ティルの歴史観の必然的な発展であった。

アブラハム・カイパーの有名なスローガン「Pro Rege(王のために)」は、首尾一貫したキリスト教の世界人生観――つまり、「生活のあらゆる領域において、我々の思考も活動もすべて、主イエス・キリストの御言葉に基づかねばならない」と説く世界人生観――を短く言い表す金言である。このテーマは、それから必然的に生まれる歴史における神の御国[の発展]に関する楽観論(ヴァン・ティルはこれを一貫して発展させることをしなかったが)とともに、ヴァン・ティル主義の明確な「再建主義的」延長及び適用である。

ヴァン・ティルの「遺産」についてジョン・フレームは次のように述べた。

今日、ヴァン・ティルの思想は、様々な個人やグループによって伝えられている。「セオノミスト」、または、キリスト教再建主義者は、・・・認識論において、徹底したヴァン・ティル主義者である。(“Cornelius Van Til,” in Handbook of Evangelical Theologians, ed., Walter A Elwell [Grand Rapid: Baker, 1993], 167.)

(Ibid., 20-22n.)


ヴァン・ティルを無千年王国論者とし、再建主義者との差異を強調することは間違いであろう。

ヴァン・ティルは、認識論においてだけではなく、終末論においても、再建主義と同一の意見をもっていたと考えるべきだ。

 

 

2006年5月14日

 

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