クリスチャン・シオニズムの致命的な誤謬


2004年5月11日の『シオンとの架け橋イスラエル・ニュース』に次の記事が載っていた。


*米国のクリスチャンシオニスト団体が、パレスチナ国家設立に反対する投票を計画中。「イスラエルの地にイスラム独裁の暴力国家を設立することを定めた行程表は間違いだ」と実行責任者は語っている。(P)

クリスチャンシオニストたちは、創世記において神がアブラハムに与えた領土の約束は成就していない、と主張し、その領土預言成就を未来に期待する。そして、今がその時だと考え、パレスチナに領土を獲得しようとするパレスチナ人を妨害し、イスラエル政府の領土拡大を後押しし、それに逆らうイスラム教国をアメリカを使って民主化し、イスラム原理主義体制をこの世から抹殺する人々に同意している。

これままったくの誤謬である。

なぜならば、イエスは「私は律法と預言者を成就するために来た」といわれたからである。

「イエスが来られた時に、アブラハムへの約束は成就しなかった」と主張する人々は、このイエスの御言葉を「偽り」としている。

イエスは旧約聖書のすべての記事の完成者であり、成就者である。律法は彼において完全に遵守されたので、それ以降、我々は律法を守らなくても刑罰に遭う必要はなくなったのである(ガイドブックとして守る必要はあるが)。

預言の書も、すべてキリストにおいて成就されている。だから、「領土問題は例外だ。まだここと、ここの地区がイスラエルの領土になったことはないから」というのは間違いだ。

じゃあ、キリストはどうやってこれらの取り残し領土を獲得されたのか。

「私は天においても地においても『一切の』権威が与えられています」という言葉から分かるように、イエス・キリストは、宇宙の所有者になったからだ。

そして、イエス・キリストにつくクリスチャンも、宇宙の所有者になったからだ。

「パウロであれ、アポロであれ、ケパであれ、また世界であれ、いのちであれ、死であれ、また現在のものであれ、未来のものであれ、すべてあなたがたのものです。」(1コリント3・22)

キリストにつく者たちは、世界の領土の所有者であり、世界の王である。

それゆえ、アブラハムの領土預言は成就しているのである。


ちなみに:

今のクリスチャン・シオニストたちの誤謬は、次の2つにある。

(1)イエス・キリストを信じなくてもイスラエル政府はパレスチナの主権者になれる。

(2)イエス・キリストは領土預言を成就せず、それゆえ、イスラエル政府が政治的・武力的にそれを獲得しなければならない。

(3)覇権の拡大は暴力によってもよい。

もうお分かりのとおり、これらは、すべてイエスの時代のユダヤ人の考え方と同じである。

イスラエル政府の精神的模範は、ローマ軍に対して最後まで抵抗したマサダの戦士たちである。

彼らは「神への服従、謙遜なしでも、イスラエルは栄光を獲得できる」と考えた「パワー崇拝者」である。

もちろん、これは、「神への服従と謙遜」を前提としたアブラハムやモーセの契約の思想と完全に矛盾している。

いや、むしろ、「私にひれ伏すならば、これらのものをあなたに与えましょう」と言ったサタンの契約思想である。

「忌わしいものだ。偽善の律法学者、パリサイ人たち。…律法の中ではるかに重要なもの、すなわち正義もあわれみも誠実もおろそかにしているのです。これこそしなければならないことです。」(マタイ23・23)

 

 

2004年5月11日

 

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