パレスチナの土地はユダヤ人にとって固有の領土か?


NHKで、ブッシュ大統領と宗教右派の関係について報道されていた。

その中で登場した宗教右派の牧師は、「聖書では、パレスチナは神がイスラエル人に与えられた固有の土地であると書いてある。だから、それを取り戻すべきだ。」と述べていた。

ユダヤ人も同じ理屈を言うので、この牧師はユダヤ人と仲がよいという。

この聖書解釈はまったくのデタラメである。

土地は、神のものであって、人間のものではない。

「地はわたしのものである」(レビ25・23)

人間は永遠に地を固有の所有物とすることはできない。

常に、人間が持っている土地は、神から借りたものである。

人間は、どこまでいっても、「借地人」でしかない。

だから、神の御心にそわないことをすれば、人間は土地を追い出される。

イスラエルがパレスチナの地を追われたのは、罪を犯したからである。彼らは、聖地にいるべき人間ではなかったのである。

「あなたがたがこの地を汚すことによって、この地が、あなたがたより先にいた国民を吐き出したように、あなたがたを吐き出す・・・」(レビ18・28)

「あなたがたが、わたしのすべてのおきてと、すべての定めとを守り、これを行なうなら、わたしがあなたがたを住まわせようと導き入れるその地は、あなたがたを吐き出さない。」(レビ20・22)

今日、「先住民族の次にやってきた人間は侵略者だ」という誤謬が世界に蔓延している。

アメリカ白人はインディアンを追い出し、コルテスやピサロは、南米の原住民を追い出した侵略者である、という。

この理屈を真剣に適用するならば、インディアンも侵略者ということになる。

なぜならば、インディアンたちの前に先住民がいたかもしれないからだ。

この理屈をまじめに適用するならば、際限のない「元祖争い」が起こるだろう。

どの民族がそこに先に住み着いていたか、ということは、その土地を所有する正当な権利者を決定するための究極的な基準ではないのである。

なぜならば、「神だけが土地の所有者だから」。

人間は、借地人であり、神の法を破って堕落すればいつでも追い出される運命にある。

アパートの賃借契約で、もし住民がオーナーの指示に従わず、勝手に増築や、内庭に築山などを行えば、追い出されても文句は言えない。オーナーが彼を追い出して、決まりを守る住民をその後に住まわせても誰も文句は言えない。

アステカやインカ文明のように、無実の人々の血を大量に流す悪魔的な文明は滅亡の憂き目にあっても不思議ではない。

あの有名なピラミッドの上では、生きたまま人間の心臓を取り出して神に捧げる儀式が行われていた。その順番を待つ行列が延々と続いたという。神殿の柱の一本一本の下には若い女性が生き埋めにされた。(*)

イスラエルは、堕落し、聖地にいる価値のないものと判断されたので、追い出されたのである。

彼らは、神が和解のために使わした預言者を殺した。そして、最後には御子までも十字架につけて殺害したのである。

だから、パレスチナはイスラエルの固有の領土であるから帰国する権利があり、聖書に約束された土地を武力を用いてでも奪還する権利があるなどということは言えない。

土地を支配したいのならば、神の許可が必要である。

神が聖書に示された指示に従うことによって土地の支配が可能になる。

それでは、その指示とは何か。

「柔和になること」つまり「謙遜になること」である。

「柔和な者は地を相続する」(マタイ5・5)

剣を取ったペテロに対してイエスは「剣を取る者は剣によって滅びる」といわれた。

ユダヤ人がパレスチナに住もうとするならば、「我々は選民で、この土地を所有する権利がある。パレスチナ人ははやく出て行け」というような傲慢な態度ではだめだ。

互恵精神がない限り、この問題は永遠に続くだろう。

(*)
「それでは、現地の文化が堕落しているならば、自由に侵略してそこを支配できるのか。」という問題が起こるだろう。

私は、原則としてそれはできないと考える。

どんなに抑圧的な体制であっても、そこにおいて国家が義の僕として犯罪者を罰し、秩序を維持するために正当に活動しているならば、その国の支配を崩してはならないと思う。

パウロは、偶像崇拝をし、剣闘士など、ひどい人権侵害をおこなっていたローマを打倒することを叫んだのではなく、「権威にしたがえ」(ローマ13章)と述べている。

しかし、だからといって、国際社会がルワンダのような数十万人の虐殺を傍観してよいと言っているわけではない。

このような著しい神の法に対する違反が行われている国に対して、国際社会は人命を守るために積極的に介入する必要もあると考える。

 

 

2004年7月26日

 

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