TBSストリーム番組制作担当者殿


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勝谷氏が、キリスト教原理主義について触れていたことについて、視聴者に誤解を与える点がいくつかありましたので、コメントさせていただきます。

彼は、「中国にその過ちを認めさせることは、ブッシュのキリスト教原理主義に進化論を認めさせるくらい難しい」と言いました。

いくつかの誤解があります。

1.ブッシュはキリスト教原理主義ではありません。

彼は、表面的にはキリスト教原理主義つまりキリスト教ファンダメンタリズムであると標榜していますが、実際のところは、行動においてそれを否定しています。

彼がイラク戦争を始めた際に、彼の所属教会はイラク戦争をやるなと言いましたが、その制止を振り切って侵略しました。キリスト教ファンダメンタリズムの教義の中において侵略戦争は禁止されています。

イエスは、
「剣を取る者は剣によって滅びる」と戦いを求めたペテロを諌められました。

ブッシュ大統領は、スカル・アンド・ボーンズというエール大学のオカルト秘密結社に属しています。

2.キリスト教原理主義は、科学をむやみに否定するものではありません。

アメリカのキリスト教の基本であるピューリタン主義は、カルヴァン主義、すなわち、聖書信仰に立ち、キリスト教ファンダメンタリズムです。

科学は、このキリスト教ファンダメンタリズムの中から生まれたのです。

経験科学の祖フランシス・ベーコンは、カルヴァン主義者でした。

アルフォンス・ドゥ・キャンドルは、『科学と科学者の歴史』(1885)の中で、ヨーロッパの過去二百年の科学者は圧倒的にプロテスタント信仰を背景にしていたと述べています。

ブラッセル自由大学のジャン・ペルスネア教授は、16世紀の南部ネーデルランド(ベルギー)でも、当時の科学者の大部分が、十万ほどしかいなかったプロテスタントのなかから輩出したことを証明しました。

アメリカの社会学者ロバート・K・マートンは、1938年に、1663年にイギリス王立学会を創立した人々の65パーセントが人口のごく一部を占めるピューリタンの信仰に立つことの意味を解明しました。

S・M・メイソンは、これら研究をふまえ、『科学の歴史・上』で、「近世ヨーロッパの大科学者のなかで、プロテスタントがカトリックを凌駕していることには、三つの主なる原因があげられるであろう。第一は、初期プロテスタントの心性と科学的態度との類縁、第二に、宗教的目的達成のための科学の使用、第三に、プロテスタント神学の宇宙的価値と初期の近代科学のそれとの一致である」と述べました。

3.進化論は科学的仮説にすぎない

進化論を科学的、非科学的の分水嶺とすることはできません。

なぜならば、進化論は科学理論という点で非常に欠陥がある考え方だからです。

例えば、進化論は次の疑問に絶対に答えられません。

「光合成のシステムが完成する(仮に)30億年の期間、なぜその器官は退化しなかったのか。」

光合成のシステムは、無数の複雑な物質のやりとりの過程から成り立っています。

その物質のやりとりの過程がすべてそろわない限り、光合成はその個体の生存に寄与しないのですから、それができる30億年の間、光合成の器官は無用の長物であり、それゆえ退化するはずです。

なぜそれは退化しなかったのか、いや、逆に、どうやってその器官は徐々に化学反応の過程を育て、システムを一つ一つ完成させていったのか。

この完成には、自然淘汰の理屈は適用できません。なぜならば、淘汰される対象と生き残る対象が存在しないからです。なぜならば、光合成が成長する過程においては、いずれも生存に有利な形質はまったく存在しないからです。

例えば、A→B→C→D(光合成完成)という段階で進化が進んだとします。

この中で自然淘汰によって生き残る可能性があるのはDだけです。

AやBやCの段階では、生存に有利な形質はまだ獲得されていないのですから。

CからDだけは自然淘汰の理論で説明できます。

しかし、AからB、BからCについては自然淘汰では説明できません。
AもBもCも生存能力において差がないからです。まだ他の個体に対して有利な形質を獲得していないのです。

それなのに、どうしてAはCにまで発展したのでしょうか。

これは、進化論では絶対に解決できません。

進化論は科学的ではない。だから、我々が進化論を信じないのは、単に聖書が創造を主張しているからという理由だけではなく、進化論が科学的に不可能な理論だからです。

シカゴ大学のモルティマー・J・アドラーは、進化論を「人気のある神話」と呼び、次の題名の本を著しました。

『科学の名を冠した流行と謬説:現代の擬似科学者の奇妙な理論と、彼らを取り巻くへんちくりんで、こっけいで、人騒がせなカルト。人間の騙されやすさの研究。』(Fads and Fallacies in the Name of Science: "The Curious Theories of Modern Pseudo-scientists and the Strange, Amusing, and Alarming Cults that Surround Them. A Study in Human Gullibility.")


4.勝谷氏へ

氏は、キリスト教ファンダメンタリズムを何かイスラム原理主義からの連想でか、狂信的ととらえておられるようだが、我々は、きちんと教育を受け、正しいものと間違ったものを理性的に区別しながら生活しています。

ある考え方の人々を、レッテルだけで一方的に決め付ける氏の姿勢に疑問を感じる次第です。

また、TBSラジオストリーム殿は、以前にアメリカのファルウェルの死去の際に、キリスト教ファンダメンタリズムに対する敵意丸出しの報道を一方的にされていましたが、宗教に関して公平であるべき報道機関として不適切な内容であったと思います。

印象だけで、判断するのではなく、内容を調べ、伝聞だけとか、評判だけを伝えるのではなく、直接に当事者に取材し、著作を調べるなどの緻密な検証作業をすべきではないかと思います。

 

 

2008年3月19日

 

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