世界統一政府論者の影響2


<O様>
富井先生、

「世界統一政府論者の影響 」拝見致しました。
ブッシュに続いて安倍ですか・・・誠に憂慮すべき事態です。
安倍氏の場合は日本国民を文鮮明に売り渡すも同然の行為ですね。
さて、新改訳聖書に「意図的な誤訳が何箇所かある」とのことですが、
差し支えなければ御教示頂けませんでしょうか。
所属教会も家庭礼拝も新改訳聖書を使っておりますので。
お忙しいところ、誠に恐縮ですが、御高配よろしくお願い申し上げます。

<tomi>

以前いろんなところで触れておりますので簡単に説明させていただきますが、

(1)
「まことに、あなたがたに告げます。天地が滅びうせない限り、律法の中の一点一画でも決してすたれることはありません。全部が成就されます。」(マタイ5・18)

ここで「全部が成就されます」と単文として訳されている個所は、原語では「全部が成就されない限り」という副詞節です。

つまり、「天地が滅びうせない限り」と「全部が成就されない限り」は並行的に「一点一画でも決してすたれることはありません」を修飾しています。

原語に忠実に訳すると、

「天地が滅びうせない限り、全部が成就されない限り、律法の中の一点一画でも決してすたれることはありません。」となります。

こう訳すると、はっきりと「律法の中の一点一画でも決してすたれることはありません」が浮き上がってき、「新約時代においても律法は有効だ」ということが教えられていることが分かりますが、新改訳のように訳すと、「全部が成就されます」において、律法の有効性がイエスにおいて終わってしまったかのような印象を与えます。

つまり、「律法の中の一点一画でも決してすたれることはありません」の後ろに「全部が成就されます」が追加されることによって、「決してすたれることはありません」の主張が薄められてしまいます。

新改訳の反セオノミーの立場と合致した翻訳です。

(2)
「あなたがたは、世にあっては患難があります。しかし、勇敢でありなさい。わたしはすでに世に勝ったのです。」(ヨハネ16・33)

ここで「世に勝った」と訳されている個所は、原語では「世を征服した」という意味です。

新改訳はディスペンセーショナリズムの立場です。ディスペンセーショナリズムは、現在の我々の時代においてイエスが世の王であるというよりも、サタンが王であり、イエスが王になるのは、未来に訪れる(再臨後の)千年王国時代においてであると主張します。

この個所をなぜ「征服した」と訳さなかったかと言えば、それはディスペンセーショナリズムの教えと矛盾するからと思います。

(3)
「このイエスは、神が昔から、聖なる預言者たちの口を通してたびたび語られた、あの万物の改まる時まで、天にとどまっていなければなりません。」(使徒3・21)

「万物の改まる時まで」と訳されている個所は、原語では「万物が回復する時まで」という意味です。

「万物の改まる時まで」と訳すると、「キリストが再臨することによって万物が改まる」というニュアンスになりますが、「回復する時まで」と訳すると、「万物が回復しないうちはずっと天にいたままだ」というニュアンスが出てきます(よく2つを読み比べてみてください)。

すると、ディスペンセーショナリズムの「キリストが再臨してハジメテ世界は神の秩序に変わる」という主張と矛盾します。

実際には、「キリストは万物が回復しないうちは天に留まっておられる」と聖書は教えているのですが・・・。

(4)
「それゆえ、あなたがたは行って、あらゆる国の人々を弟子としなさい。」(マタイ28・19)

「あらゆる国の人々」と訳されているπαντα τα εθνηは、「すべての民族(国民)」という意味です(πανταはall、ταはthe、εθνηはnations)。

キッテルによると、新約聖書に64個所に出てくるεθνη(またはεθνοs)は、πανταとともに用いられている時に、all the nations(すべての民族)という意味で使われています(Kittel,"εθνοs" p.369)。

「ギリシアの初期の頃から一般に使用されているこの言葉は、・・・ほとんどの個所において『民族』の意味で用いられ、・・・(新約聖書の)約60箇所は、・・・一民族、または、複数の民族を意味する」(同上)。

「人々」と訳するのは明らかに誤訳です。

新改訳のように「あらゆる国の人々」と訳するのと、「すべての民族」と訳するのでは天と地の違いがあります。

前者は、弟子とする対象は「人々」ですが、後者は、「民族」そのものです。

前者は、国の中の一部の人々でも弟子とすればいい、となりますが、後者は「民族」丸ごと弟子としなければならないとなります。

ディスペンセーショナリズムは大宣教命令を前者と解釈しますのでこのような解釈をしたのでしょう。

 

 

2006年6月21日

 

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