アメリカの没落


田中宇氏の最新ニュースレターでは、アメリカの中道派は意図的にイラク戦争を失敗させて、国際協調を図っているようすが見られるといわれている。


…アメリカがイラク占領に(意図的に)失敗して沈没し、その分他の大国の覇権が拡大することで「国際協調体制」を作ろうとしている感があるアメリカの中道派…

父ブッシュやベイカーら中道派が子ブッシュをかつぎあげたのが、失敗をさせるためであった、ということは考えにくい。

たしかに、彼は、大統領の器ではない。政権担当者としての知恵も経験もなく、やり方が露骨で強引すぎる。

この露骨で野蛮な采配に脅威を抱いたフランスやロシア、ドイツが独自路線を選び取り、ポーランドなど他のヨーロッパ諸国もアメリカの知恵のなさに愛想をつかしてヨーロッパ共同体よりに政策を転換している。

今後ブッシュが再選されるようなことでもなれば、ますます世界の他の地域がアメリカを離れて、独自路線をとり、多極化は進むだろう。

アメリカの地盤沈下は学術面でも進んでいると田中氏は言う。


加えて問題になっているのが「国家の安全」に関わる分野の研究を行っている外国人の科学者に対し、テロ組織の関係者ではないことを確認するための審査を1年ごとに義務づけたことだ。この審査には2カ月以上の期間がかかり、しかも米国内にとどまったまま審査を受けることができない。大学では一つの研究を行うのに数年かかるケースが多いが、外国人の科学者たちは毎年審査を受けるために2カ月以上母国に戻らねばならない状態になっている。…

911後にビザの問題が起きる前から、科学技術の分野ではアメリカの衰退が始まっている。アメリカで書かれる科学技術分野の論文数はここ数年横ばいを続けており、2003年にはついに前年比マイナスとなった。これに対して英独仏のヨーロッパ勢が書いた論文数は増え続け、1980年代からの20年間で毎年書かれる論文数は倍増している。アジアでは、日本が10年間で論文数を倍増させたほか、最近では中国や韓国の学者が書く論文も急増している。

テロ以降の安全保障強化を、こういった研究分野の制限や、市民的分野の自由制限に直結させているところが、ブッシュの頭の悪さだ。安全確保と学問の自由な発達とを両立させ、国力を失わないようにするのが大統領の知恵ではないか?

そればかりか、研究費の配分が国防関係に偏っているという。


しかもブッシュ政権のアメリカでは、政府の研究開発費が増えたのが国防総省、NASA、国土安全保障省という防衛関係の3つの役所の管轄分野に限られており、それ以外の分野の研究開発費は削られる傾向が続いている。

軍事部門への投資は、再生産に結びつきにくく、新しい兵器の消費のために戦争を繰り返す以外にはなくなるので、経済にとって負担となり、長期的に見て、自分の首を占めることになることになぜ気付かないのだろう。

善と悪、敵と味方という二元論的思考しかできない単細胞大統領と、その大統領を支える宗教右派の単細胞ディスペンセーショナリストたちに政治を任せるわけにはいかないことを、米国民は次の選挙で示すべきだ。

 

 

2004年5月26日

 

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