ビザンチン本文を復活させよう2


この仮説は、折衷的パッチワークこそオリジナルであるとする思索的な現代の学説よりもはるかに現実性が高い。このパッチワークは、方々に散っている断片を継ぎ合わせてできており、常に、現存する写本からの支持レベルが変化するのである。

概して通常の伝達方法を前提とする歴史的理論のほうが、原著を忠実に再現しているとみなすことができる単一の本文(a single Textform)の伝播と優勢を容易に説明する。

ビザンチン優勢説には、現代の折衷的学説が提示する代替案よりも、はるかに難問題が少ない。

初期の伝達史の説明が理論の問題に留まっている限り、ビザンチン本文内に見受けられるほとんどすべての異文は、ウェスタン本文もしくはアレキサンドリア本文のいずれかにも含まれる構成要素である。

しかし、ウェスタン本文型及びアレキサンドリア本文型は、ビザンチン本文よりも、はるかに相違点が多い。このことは、「これらの地域的本文のそれぞれが独自に、もっと優勢な伝承を忠実に再現していたと思われる共通の源から派生した」ということを強く示唆している。

さらに、個々のビザンチン本文の異文は、合理的な内部・筆写的・伝達的根拠に基づいてはっきりと弁証できるものであり、非ビザンチン本文型によく見られる異文に存在する弱点がはるかに少ない。

ビザンチン優勢説は簡明であり、その簡明さは、現代の折衷的モデル・・・が要求する伝達史と比較して顕著な違いがある。

これらのモデルは、「非常に初期の時代に、オリジナルの本文は、四散したため、その後、異なる本文型が発展し、そのいずれも失われた原著を再現しているとは言えない」との考えに基づいている。

このシステムのもとで、ビザンチン本文は、正式に発表された公的校訂版(formal recension)から派生したと考えられている。もしくは、(おそらく初期の)様々なウェスタン本文型及びアレキサンドリア本文型に由来する異文の比較的非体系的な選択と合成を含む導きなき加工から派生したと考えられている。

いずれの場合でも、この異文の非批評的選択は、様々な文体的及び調和的発展と組み合わさり、後代の写本記者の考え方の原型となったことだろう。

問題は、「広範囲に普及したにもかかわらず、比較的統一が取れているビザンチン本文がはたして、そのような無計画な手順を通じて生まれることがはたしてあるだろうか」という疑問にどう答えるかである。

ひとたび、ビザンチン優勢説の完全に理論的かつ実際的な概要が、既存の証拠に照らして検討を受けた場合、(歴史的な確認を欠く)これらの仮定は、保証なきものとみなされるのである。
http://koti.24.fi/jusalak/GreekNT/PREFACE.PDF

 

 

2010年4月5日

 

ツイート



 ホーム

 



millnm@path.ne.jp