TPPは、日本弱体化の戦略


TPPは、日本弱体化の戦略だと思う。以下中野剛志(京都大学助教)の解説引用します。


『TPPで輸出は増えない』 中野剛志(京都大学助教)

 貿易の関税撤廃などを目指すTPPへの早期参加を求める声が高まっている。だが参加国を見渡しても、日本と利害面で連携できそうな国は見あたらない。対米輸出で重要なのは為替であり、関税撤廃で農作物の輸入が増えるだけだ。そもそも外交上弱い立場にある日本に、有利なルール作りなど期待できない。

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 10月初頭から先日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)にかけて、環大平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加の是非を巡る議論が、突如として国内で沸騰した。TPP協定は、物品貿易は原則、全品目について即時または段階的関税撤廃をめざすという急進的なものであり、また人の移動なども含む包括的な枠組みだ。

 このような大問題についての結論を、なぜこれほど急ぐ必要があるのだろうか。TPP推進派の主張によると、協定交渉|こ早く参カロした方が、 日本に有利なルール作りが可能になるからだという。参加の決断が遅れれば、不利なルールでも飲まざるを得なくなるという。しかし、現在のTPP交渉への参加国の顔ぶれと現下の情勢を客観的にみる限り、日本が自国に有利なルール作りを誘導できるとは到底思えない。
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 第1に、現在のTPP協定交渉参加国の中に日本と連携してくれそうな国がない。米国以外の参加国は、外需依存度が極めて高い「小国」ばかりだ。また、いずれも1次産品輸出国であり、低賃金の労働力を武器にする発展途上国も多い。

 米国だけが国内市場の大きい「大国」であり、それを武器に参加国を主導できる立場にある一方、農産品については国際競争力を持つという強いポジションにある。

 その中で日本だけが工業製品輸出国だ。さらに国内市場の大きい先進国として、他の参加国から労働力や農産品の輸入を期待されている。しかし、デフレのため低賃金の外国人労働者を受け入れるメリットがなく、農業はぜい弱だ。日本の置かれた状況は、TPP交渉に参加している国々とは際立って異なる。国際ルールの策定の場では、自国と同様の利害や国内事情を有する国と連携しなければ、交渉を有利に進められない。ところが、日本と同じような利害や国内事情を有する国はなく、連携できそうな相手は見あたらないのである。

 第2に、TPPによって日本が輸出の拡大で成長できる仕組みができると考えるのは甘すぎる。なぜなら、米国は慢性的な経常収支赤字が持続不可能であるとの認識の下で、対外不均衡を是正すべく、5年間で輸出を2倍にすると宣言し、輸出の拡大を進めようとしているからだ。対外不均衡の是正と、米国内の関税を引き下げるTPPの推進とは、一見矛盾するようにみえる。しかし、米国の貿易政策にとって重要なのは、もはや関税ではなく為替レートなのだ。だから米国は、建前はともかく、本音ではドル安を志向する。また、不況の長期化が見込まれる中で、米国の金融緩和は継続するだろうからドル安は当面続くと考えてよい。


 ドル安は、日本企業の競争力を奪うか、米国での現地生産比率を向上させる強力な手段だ。例えば、ホンダの昨年の米国での現地生産比率は80%を超えている。日本の輸出産業は、為替リスクの回避のためにすでに海外生産比率を高めている。ドル安が続く限り、この傾向はさらに進むだろう。米国での現地生産が進むのであれば、仮に日本がTPPに参加し、米国に関税を全廃してもらったとしても、もはや関税撤廃と輸出競争力の強化とは何の関係もない。TPP参加で輸出が増加するなどという試算は、取らぬたぬきの皮算用で終わるのだ。


 一方で、ドル安でさらに安価になった輸入農作物は、関税の防波堤を失った日本の農業に壊滅的な打撃を与えるのは間違いない。製造業なら海外生産によって為替リスクも関税も回避して生き残れるが、農業はそうはいかない。仮に将来、米国が貿易黒字を計上してドルが高くなったとしても、いったん失われた日本の農業を関税なしで復活させることなど不可能であり、食料の米国依存がさらに深まるのは確実だ。


 要するに、日本をTPPに誘い込んだ上で、ドル安を誘導することによって、日本に輸出の恩恵を与えず、国内の雇用も失わずして、日本の農産品市場を一方的に収奪することができる。これが米国の経済戦略なのである。

 第3に、日本は現在、対中・対口で安全保障上の問題を抱えており、普天間基地問題でこじれた米国と関係を改善しなければならない。そんな弱い立場にある日本に、米国に妥協せずに自国に有利なTPPのルールを策定できる力があるわけがない。そもそもTPP協定の問題がこの時期に突然浮上したのは、尖閣や北方領上の問題のために、頼みの米国に妥協せざるを得なくなったからではないか。日本を守ってもらう見返りに、農業市場を差し出そうということだ。前原誠司外相がTPPに最も熱心だったのもそのためかもしれない。


 米国依存の外交姿勢がTPP交渉への早期参加の動機の背景にあるのだとしたら、日本に有利なルール作りなどできるはずがない。そうだとしたら「早期に参加すれば、ルールはそれだけ有利になる」という論法は、相当悪質な詭弁(きべん)である。』

今回の「降ってわいたような」TPP交渉の裏には、アメリカの「輸出拡大」を目指す戦略が見えてきます。
日本の国益のためのTPPなら納得出来ますが、自分達で壊しかけた日米同盟の取引材料として農業を売る奴らは許せません。(-_-#)ピクピク

http://oyaji.betoku.jp/article/0358910.html

 

 

2010年12月19日

 

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