リンカーンの革命


http://www.sobran.com/columns/2004/040527.shtml にリンカーンが行った革命について紹介されている。


もしアメリカの歴史を一言で言えと言われれば、私は「合衆国は変わった。」と言うだろう。

単なる懐古趣味から言うのではない。文字通りの事実なのだ。南北戦争以前、合衆国は、複数名詞だった。合衆国憲法はそれを複数名詞として扱っている。たとえば、合衆国の敵について「彼らの」敵と呼んでいる。

合衆国が自由な主権国家の連邦であり、一枚岩の『統合体』とか全能の政府(これは南北戦争戦争以後の姿である)などではないと考えていた人々、連邦政府には少数の特定の権力しか与えることはできないと考えていた人々はみなそれを複数名詞として扱っていた。


この変化は暴力によってもたらされたのであって、自然的発展ではなかった。リンカーンは、連邦から離脱しようとした州の脱退権を認めず、戦争を仕掛けた。これは、独立宣言の否定である。独立宣言は、13の植民地を「自由で独立した州」と呼んでいたのだから。

ワシントンやジェファーソンは、たびたび「いくつかの州が離脱するのではないかと心配だ」と語ったが、これは自由で独立した州の権利であることを当然のことと考えていた。…仮に中央政府が憲法を超えて権力を行使した場合は、離脱も正当な選択肢であると考えていた。

南北戦争以前、いくつかの州が連邦を離脱することを考えていた。奴隷廃止論者は、もはや奴隷制賛成州と連合しないためにも北部の州は離脱すべきだと語っていた。元大統領ジョン・クインシー・アダムズ上院議員は、もしテキサスが連邦に受け入れられるならば、マサチューセッツは離脱すべきだと語っていた。誰もアダムズに向かって「あなたは自分が守ることを誓った憲法を誤解している」とは言わなかった。

…アンドリュー・ジャクソンは、もしサウスカロライナが脱退を宣言するならば、侵攻も辞さないと脅かしていた。熱心な連邦主義者であったダニエル・ウェブスター(議員)すらもこれには驚いていた。ジャクソンは、脱退を認めないという権利がどこからくるかについて説明をしなかった。憲法には、大統領にそのように言う権利があるとは書いていない。…

しかし、リンカーンは、ジャクソンの恫喝を先例として採用し、離脱を「反逆」と呼び、その企てを粉砕すると公言した。その結果、リンカーンは、いくつかの点で憲法に違反せざるを得なくなった。彼は、北部諸州において言論と出版の自由を制限した。何千もの人々を正当な理由なく逮捕した。その中には、彼の政敵であった代議員も含まれていた。脱退しようとした州に侵攻し、その政府をつぶし、代わりに軍事的専制を敷いた。

…自由で独立した州には、連邦を脱退する権利があると考え、それゆえ、リンカーンの戦争は間違っていると考えていた北部の人々は、リンカーンの目に内部の敵と映った。戦争に勝利し、再選を果たすには、彼らの口を封じなければならなかった。しかし、彼の北における恐怖政治は、人々の関心をほとんど集めなかった。

リンカーンは、曲がりなりにも「連邦を救った」が、彼が救った連邦は憲法が記しているものとはまったく別物だった。彼の支持者は彼のことを「新しい憲法」を作り、「第2の独立戦争」を戦った人と賞賛した。彼は、これらの賛辞を聞いて当惑したことだろう。なぜならば常日頃から「私は、憲法を実行し、憲法に文字通り従ったまでだ」と語っていたからである。リンカーンが自分で指名した判事も含まれる合衆国最高裁は、後で彼の行動が違憲であるとの裁定を下したのだが。

リンカーンや南北戦争に関するセンチメンタルな神話がまだ根強く残っているため、これらがアメリカ史に対して持つ根本的な破壊的性質が見えにくくなっている。昔の[ゆるやかな]連邦は、もともと憲法が排除しようとしていた別の種類の「合併された」制度に様変わりした。以前は州の複合体だったものが、単一体になった。そして、文法すらも変化したのだ。

合衆国はもはや「彼ら」ではなく、「彼」になった。この単純な文法的変化の背後に、膨大な血と自由、そして、論理までもが犠牲になった歴史を知る人は少ない。

憲法は、もともと入植したクリスチャンの考えから見て「統一的」であったが、南北戦争以後は、その憲法をも驚かせるような統一政府が誕生した。

人間には、神の助けだけに信頼して独立して生活することを拒む性質がある。

人間は、互いに集まって依存しあい、真理など関係なく自分の権力を拡大し、神の法を無視して、好き勝手やれる体制を望んでいる。

バベルの塔こそ、アメリカの歴史の象徴である。

「そのうちに彼らは言うようになった。『さあ、われわれは町を建て、頂が天に届く塔を建て、名をあげよう。われわれが全地に散らされるといけないから。』」(創世記11・4)

 

 

2004年6月12日

 

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