前ソ連反体制活動家が欧州連合の独裁制移行を警告(全文)



ソ連時代、反体制活動家として逮捕、強制収容所、精神病院などに12年間収容され、1992年にイギリスに亡命したヴラジミル・ブコフスキー氏のインタビューが「ブリュッセル・ジャーナル」に掲載されているので要約する。(tomi)
http://www.brusselsjournal.com/node/865

現在63歳のかつて反ソ活動家であったヴラジミル・ブコフスキーが、欧州連合の新たなソ連への道をたどることを危惧すると述べた。先週、ブリュッセルでの講演において、彼は欧州連合を「怪物」と呼び、完全な全体主義国家になる前に早期に破壊しなければならないと語った。

ブコフスキー氏は、ハンガリー市民フォーラムのフィデッツ氏の招請により、木曜日にヨーロッパ議会を訪問した。

ヨーロッパキリスト教民主主義団体の一員であるフィデッツは、イギリスに住むブコフスキーを1956年ハンガリー動乱50周年記念に招待した。・・・

ブコフスキーは、1992年に閲覧を許されたソ連の極秘ファイルに含まれる秘密文書に言及した。

これらの文書には、欧州連合を社会主義組織に転換するとの「陰謀」が存在する証拠が記されていた。

私は、この会談に出席し、講演を録音した。さらに、ブコフスキー氏にインタビュー(約15分間)した。これらを下記に記す。・・・

ブコフスキー氏は、20世紀のヒーローの一人である。若い時、彼は前ソヴェト連邦(1917-1991年)の政治犯用精神病院に入れられた経験をもつ。

22歳から34歳まで合計で12年間(1964-1976年)刑務所、強制収容所、精神病院に収容された。

1976年に、ソヴェトは、彼を西側に追放した。1992年、ロシア政府により、ソ連共産党が犯罪的組織であったかどうかを裁く裁判で証言するために専門家として招聘された。

証言の準備をするために、ブコフスキー氏は、ソヴェトの秘密公文書館の膨大な量の文書を閲覧することを許された。

これらの文書は、未だに極秘であるため、彼はそれを読んだ数少ない人々の一人である。

小さな携帯スキャナとラップトップコンピュータを持参し、ソ連政府へのKGBレポートを含む多くの文書をコピーした。



ヴラジミル・ブコフスキーへのインタビュー


http://www.brusselsjournal.com/node/system/files?file=bukovsky-interview.mp3

ポール・ベリーン: あなたは、非常に有名なソ連反体制活動家でしたが、現在、欧州連合とソヴェト連邦の間には共通性があると指摘しています。これについて説明していただけますか。

ヴラジミル・ブコフスキー: 思想の浸透、計画、方向付け、不可避的拡大、国家の消滅、これらはソヴェト連邦の目的でした。ほとんどの人はこのことを理解していません。

しかし、私たちは知っています。なぜならば、私たちはソヴェト連邦で育ち、学校や大学においてソ連の思想を学ばねばならなかったからです。

ソヴェト連邦の究極の目的は、新しい歴史的な実体であるソヴェト民族を世界中に増殖させることにありました。

同じことが、今日の欧州連合について言えるのです。欧州連合は、新しい民族を作り出そうとしています。彼らは、この民族を「ヨーロッパ人」と呼びます。それがどのような意味であるかは別として。

様々な形態の社会主義思想と同様、共産主義の教えによれば、国家、民族国家は、消滅しなければなりません。

しかし、ロシアでは、逆のことが起きました。ソヴェトは非常に強力な国家となり、民族は消滅しましたが、ソヴェトの崩壊が始まると同時に、それまで押さえつけられていた民族のアイデンティティへの渇望が反動として湧き上がり、国をほぼ破壊しつくしたのです。それは大変恐ろしいものでした。

ベリーン: あなたは、欧州連合が崩壊する時に、同じことが起きるとお考えですか。

ブコフスキー: はい。必ず。ばねは押さえつけることができますが、ご存知のとおり、人間の心理は非常に弾力的です。抑えに抑えても、反動の力はその間蓄積されています。ばねのように、それは必ず過剰に跳ね返るのです。

ベリーン: しかし、欧州連合に加盟した国々は、自発的にそうしたのではないですか。

ブコフスキー: いいえ、そうではありません。マーストリヒト条約を2度も拒否したデンマークを見てください。(ナイス条約を拒否した)アイルランドを見てください。他の多くの国々を見てください。非常に大きな抑圧の下にいます。それは、ほとんど脅迫に近いものです。

スイスは、国民投票で5回も決議を強いられました。国民は5回とも拒否しましたが、6回目、7回目にどうなるかは誰も知りません。いつも同じことです。それは、白痴を騙すためのトリックです。希望どおりになるまで人々に国民投票を繰り返させる。・・・欧州連合は、アメリカ人が「ショットガン・マリッジ(強制的結婚)」と呼ぶものなのです。

ベリーン: 若者たちは、欧州連合に関して何をすべきだとお考えですか。何を主張すべきですか。組織を民主化することを求めるべきでしょうか。それとも、廃止することを。

ブコフスキー:ソヴェト連邦と同じように欧州連合が民主化されることはありません。ゴルバチョフは、民主化を試みましたが、破滅させてしまいました。この類の組織を民主化させることは不可能なのです。

ベリーン: しかし、私たちには、人民によって選ばれたヨーロッパ議会があります。

ブコフスキー: ヨーロッパ議会(の代議員)は、比例代表制に基づいて選ばれており、本当の代表者ではありません。議会は何を決めていますか。ヨーグルトに含められる脂肪のパーセンテージ、そんなものです。ばかげている。議会に与えられているのは、最高ソヴェト議会に与えられていたような仕事ばかりです。議会において代議員に与えられた発言時間は、1年間に6分だけです。これは、本当の議会ではありません。


ブコフスキー氏のブリュッセルでの講演


http://www.brusselsjournal.com/node/system/files?file=bukovsky-speech.mp3

1992年に、私は前代未聞の機会を与えられました。30年経った今でも公開されていない、政治局と中央委員会の極秘文書の閲覧を許されたのです。

そこには、ヨーロッパの共同市場を連邦国家に転換する計画が、ヨーロッパの左翼政党とモスクワとの間で合意されていたことがはっきり記されていました。これは、(ソ連の指導者ミハイル・)ゴルバチョフが1988-89年に「ヨーロッパ共同の家」と呼んだ合同計画でした。

この計画は、非常にシンプルでした。それはまず1985年から86年にかけて、イタリアの共産主義者たち、ついでドイツ社会民主党員がゴルバチョフを訪問した際に提案されました。

彼らはみな、とくに(イギリス首相マーガレット・)サッチャーの民営化と経済自由主義の導入後、世界の変化が社会主義者や社会民主主義者の何世代にも渡る(いわゆる)成果を水泡に帰し、流れを完全に逆流させようとしていると不満を漏らしました。

そのため、この(いわゆる)荒々しい資本主義の攻勢に立ち向かうには、すべての国家において同時に、同一の社会主義的目標を導入する以外にはないと。

それ以前、左翼政党とソヴェト連邦は、欧州統合に大反対していました。社会主義の目標を妨害する手段と見なしていたからです。

1985年以降、彼らは見方を完全に変えました。ソヴェトは、ある結論を出し、左翼政党と一つの合意に達しました。すなわち、互いに協力し合うならば、全ヨーロッパを乗っ取り、それをひっくり返すことができるだろうと。自由市場を連邦国家に転換しようと。

(極秘のソヴェトの)文書によれば、1985-86年は、転換点となる年でした。私は、これらの文書の大部分をすでに出版しました。
http://www.junepress.com/coverpic.asp?BID=741

それは、インターネット上でも見ることができます。
http://psi.ece.jhu.edu/~kaplan/IRUSS/BUK/GBARC/buk.html

彼らが交わした会話は、まさに刮目に値します。

読者は、陰謀が存在するということをはじめて理解されるでしょう。それは、自らの政治的理念を救おうとする彼らにとってきわめて当然の行動なのです。

東側において、ソヴェトは、ヨーロッパとの関係を転換する必要に迫られていました。なぜならば、長期にわたる非常に深刻な体制危機に突入していたからです。西側では、左翼政党が、自己の存在及びその影響力と威信を失うことを恐れていました。

だから、これは彼らが大胆に計画し、合意し、実行している陰謀なのです。例えば、1989年1月に、三極委員会の代表団がゴルバチョフを尋ねました。この代表団に含まれていたのは、中曽根(前日本首相)、ジスカールデスタン(前フランス大統領)、ロックフェラー(米国の銀行家、デイビッド)、キッシンジャー(前米国務長官、ヘンリー)の各氏でした。

会議において、彼らはゴルバチョフに「ソヴェトロシアは、GATTやIMF、世界銀行など世界の国際機関に加入すべきだ」と言いました。

会議の最中、ジスカールデスタンは突然立ち上がってこう切り出しました。

「大統領、それがいつ起こるか正確にはわかりませんが、―おそらく、15年以内でしょう―、ヨーロッパは一つの連邦国家になり、あなたはこのために準備する必要があります。私たちに協力してください。ヨーロッパの指導者たちは、あなたがこれに対してどう反応するか、あなたが他の東欧諸国にどのようにそれに対処させるか、もしくは、どのようにしてこの連邦の一員になるかを注視しています。あなたは準備しなければなりません。」

これは、1989年1月の出来事です。この時、(1992年の)マーストリヒト条約は、まだ原案すら存在しませんでした。どうやってジスカールデスタンは15年後に起こる事柄を予測できたのでしょう。まさに驚きと言うほかはありません。どのようにして彼は欧州憲法(2002-03年)の作者となったのでしょうか。非常によい質問です。陰謀の臭いを感じませんか。

幸いなことに、この陰謀において、ソヴェト側は、事態に影響を及ぼす前に崩壊してしまいました。しかし、もともとの理念には、彼らが乖離縮小化と呼ぶものが含まれています。つまり、ソヴェト連邦は幾分軟化して社会民主主義のようなものになる反面、西欧は、社会民主主義と社会主義に変わる。その後、互いの間にある距離はどんどん縮まり、ついに、構造的に同化するという。

これこそ、欧州連合が、初期において、ソヴェトの体制に合致することを目的としていた理由なのです。これこそ、なぜこの2つが互いに、機能的・構造的に近似しているかの理由なのです。

例えば、私は、ヨーロッパ議会を見るときに、ソヴェト最高会議を思い出します。これは、偶然の一致ではありません。ヨーロッパ議会が最高会議に似ているのは、そのようになるように設計されたからです。

同様に、ヨーロッパ委員会は、ソ連の政治委員会に似ています。委員会のメンバーが25人であるのに対して、政治委員会が通常13人か15人であるのを除けば、非常に似通っています。その他にも、酷似しているのは、メンバーは誰にも選出されず、誰にも責任を負わないところです。

8万ページの法律を持つ欧州連合の奇妙な活動は、ゴスプランと似ています。ソ連では、経済に関するあらゆる事柄があらかじめ五年単位で計画されていました。同じことが欧州連合において行われています。欧州連合の腐敗の種類は、まさしくソ連の腐敗と同じです。つまり、腐敗は下から上に進むのではなく、上から下に進むのです。

このヨーロッパに出現した怪物の構造と特徴を調べれば調べるほど、それがソ連と似ていることにますます気づくことでしょう。もちろん、それはソ連ほど過激な体制ではありません。どうぞ私の発言を誤解しないでください。私は、それが「収容所」であると言っていません。KGBがあるわけでもありません。しかし、例えば、私は、ユーロポルのような組織に注目しています。私がこの組織を真に警戒しているのは、それが恐らく、KGBよりも大きな権力を持つようになると予想しているからです。

ユーロポルには、外交的特権が与えられるでしょう。外交特権を持ったKGBなど想像できますか。ユーロポルは、32種類の犯罪について私たちを監視するでしょう。その一つはとくにゆゆしきものです。人種差別です。別名、外国人嫌悪症。地上のどの刑事裁判所においても、このようなものを犯罪として扱うところはありません[これは完全に事実とは限らない。ベルギーではすでにそうしている――ベリーン]。

人種差別は新しい犯罪となりました。そして、私たちはすでにこのことについて警告を発してきました。イギリス政府のある人物が、私たちに「第三世界からの無制限の移民に反対する人々は、人種差別主義者とし、ヨーロッパの統合に反対する人々は、外国人嫌悪症と見なす」と言いました。パトリシア・ヒューウィットがこのことを公に述べたと思います。

・・・

他方、彼らは、イデオロギーを吹き込もうとしています。ソヴェト連邦は、かつてイデオロギーによって運営されていた国家でした。今日の欧州連合のイデオロギーは、社会民主主義、国家主義であり、その多くはポリティカル・コレクトネス[言葉の表現や用語に人種・民族・宗教・性差別などの偏見が含まれていないこと――Wikipedia]でもあります。

私は、ポリティカル・コレクトネスがどのように拡大し、抑圧的なイデオロギーになっているか注視しています。彼らが現在喫煙をほとんどあらゆる場所で禁止している事実は言うまでもありません。

聖書は同性愛を認めていないと発言したために数ヶ月にわたる迫害を受けたスウェーデンの牧師のような人々が虐待されているのを見てください。
http://www.brusselsjournal.com/node/node/538

フランスは、ゲイに関する憎悪の発言に関して同じ法律を通過させました。イギリスは、人種や宗教などに関する憎悪の発言を禁止する法律を通過させました。

今私たちが目にしているのは、後に抑圧的な手段によって強制されることになるイデオロギーの組織的導入です。これこそ、ユーロポルの目的であることは明らかです。そうでなければ、どうしてこんなものが必要でしょうか。私にとって、ユーロポルは、非常に胡散臭いものに見えます。

私は、今起こっている事柄によって誰が迫害を受けているか注意深く観察しています。なぜならば、これは、私が専門とする分野だからです。私は、収容所の時代が迫りつつあるのを感じます。

私たちは今、民主主義に対する組織的かつ首尾一貫した攻撃が急速に進展している時代に生きているのです。

この法律及び規制に関する改革法案を見てください。
http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200506/cmbills/111/2006111.htm

この法案が通過すれば、大臣は立法的権限を持ち、わざわざ議会にも誰にも通告しなくても、新しい法律を作ることができるようになります。私がこの法案を目にした際にすぐに思ったことは、「どうして私たちにはこんなものが必要なのか?」ということでした。

イギリスは、2度の世界大戦、ナポレオンやスペイン無敵艦隊との戦争を経験しました。冷戦も体験しました。冷戦時代に、私たちは、いついかなる時に全世界核戦争が勃発するかわからないと言われていました。

しかし、そのような時代であっても、この種類の法律を作る必要も、私たちの市民的自由を制限する必要も、緊急の権力を導入する必要もありませんでした。なぜそのような法律が今必要なのでしょうか。この法律は、私たちの国を、すぐにでも独裁制に変貌させるのです。

現在、私たちは非常に厳しい状況に置かれています。主要な政党は、欧州連合計画に完全に取り込まれています。いずれもそれに反対しません。それらは非常に腐敗しています。誰が私たちの自由を守ってくれるのでしょうか。私たちは、ある種の崩壊、危機に向かって突進しているように見えます。

今後、もっとも起こる可能性が高いのは、ヨーロッパの経済的破局です。このような支出と税金の増大が続けばやがて必ず破局が来ます。競争的環境を作ることに失敗し、経済に対する過剰な規制がこれからも強化され、官僚制度が今後も続けば、経済的な崩壊は避けられません。

とくに、ユーロの導入は、凶気の産物でした。通貨は、政治的に決定されるべきではない。

私は、これについて確信があります。ソ連が崩壊したように、欧州連合も破滅するでしょう。しかし、これらの事柄が崩壊した時に、それはあまりにもひどい荒廃をもたらすため、回復に1世代の時間を要するということを忘れてはなりません。

経済危機によってどのようなことが起こるでしょうか。国家間で互いに非難の応酬が拡大し、紛争にまで発展するかもしれません。現在ヨーロッパに住む第3世界からの大量移民を見てください。これは、欧州連合によって奨励されてきた。経済が崩壊した場合、彼らはどうするのでしょうか。おそらく、ソヴェト連邦の末期のように、民族間の血で血を洗う抗争が始まるでしょう。

ユーゴスラビアを除けば、ソヴェト連邦ほど民族間の緊張が激しい地はないでしょう。まさに、あのようなことがこの地でも起こるのです。私たちは、これに備えるべきです。この巨大な官僚機構は、我々の頭上で崩壊するでしょう。

これこそ、なぜ私が欧州連合の解消が早ければ早いほどよいと考えるかの理由なのです。崩壊が早ければ早いほど、我々や他の国々に対するダメージも小さくてすむ。

しかし、私たちは、急いで行動しなければなりません。なぜならば、欧州の支配者たちは、行動が敏速だからです。彼らに勝つことは容易ではないでしょう。現在の段階では、まだ比較的簡単です。もし一万人がブリュッセルで行進すれば、これらの人々はバハマに逃げ込むでしょう。

もし明日、イギリスの人口の半分が納税拒否すれば、何も起こらず、誰も投獄されないでしょう。今ならまだ間に合います。しかし、かつてドイツ安全保障省やルーマニア国家安全局の役人であった者たちによって占められているユーロポルの状況が、明日どのようになっているか分かりません。何が起こるか誰も分からないのです。

私たちに残されている時は縮まっています。私たちは、彼らに勝利しなければならない。私たちは、座って考え、最大の効果を得るための戦略を考え、できるだけ迅速にそれを実行に移さねばなりません。

そうしなければ、すでに時遅しということになるでしょう。私は何を言うべきでしょうか。私の結論は、楽観的ではありません。今のところ、ほとんどすべての国に反欧州連合の組織がありますが、これでは不十分です。私たちは時を浪費しています。

 

 

2008年10月13日

 

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