本当は凄い 日本の底力

全国民必読! ダメなのは政治家だけ
円高も中国も怖くない (by 現代ビジネス)

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1515

 

中国にはぶん殴られるわ、政府の対応はマヌケで弱腰だわ、脱官僚をはじめとする民主党のマニフェストは何一つ実現できないわ、この国はこれから大丈夫なのか、国民誰しもがそう思う。

 

 だが、世界から見た日本はまだ圧倒的に優れた国だ。実は資源大国であるし、技術力ではダントツの世界ナンバーワン。そして何より、教育レベルの高さと、誠実でサービス精神に富む人間力で他国を寄せ付けない。知らないのは日本人だけだ。

もっと自信を持っていい

 

 「失われた20年」「デフレは終わらない」「日本経済は中国に追い越される」・・・などなど、日本の将来への暗い予測を新聞やテレビで聞かない日はない。もうこの国に希望はないかのような雰囲気だ。

 

 だが、悲観する必要はまったくない。本当は、日本は十分すぎるほど強い。

 

 10月25日に中国政府直属のシンクタンク「中国社会科学院」が発表した報告書で、日本の国際競争力はアメリカ、EUに次ぐ世界第3位とされた。中国は17位。報告書は日本について「アジアで絶対的なトップの地位を保っている」と記している。

 

 要するに、これまで政治的にさんざん日本を軽侮するかのような態度を取ってきた中国が、本当は「日本は凄い」と認めているのだ。いや、彼らの本音を正確に言うと、「腰抜けの政治家と何もしない官僚以外、日本は凄い」となるだろう。

 

 そもそも「中国が成長すると日本が弱くなる」という中国脅威論は、日本政策投資銀行参事役の藻谷浩介氏が著書『デフレの正体』で指摘したように、まったく誤った俗説にすぎない。事実は、中国経済が成長すればするほど、日本の対中貿易黒字は膨らみ、日本が儲かる仕組みになっている。実際の日本は、世界に冠たる黒字大国なのだ。

 

 よく、日本の弱点として「資源の輸入依存」が言われる。確かに日本は、石油や天然ガスなどの資源を多く輸入している。しかし、「資源問題が日本の弱点」だというのはまったくの誤解—と断じるのは、経済評論家の三橋貴明氏だ。

 

 三橋氏によると、日本の領海と排他的経済水域には、実は膨大な資源が眠っている。その量は(アメリカ、フランス、オーストラリア、ロシア、カナダに次いで)世界第6位。

 

「天然ガス(メタンガスが氷状になったメタンハイドレート)に関して言えば、調査が終わった分だけで、日本国内の天然ガス需要の30年分が眠っていることが確認されています。全部で100年分になるという観測もある。この採掘が採算ラインに乗れば、日本は無敵国家になるでしょう。

 

 日本では、海水からウランを抽出する技術も進んでいます。全国の原子力発電所で消費するウランの量は、年間で合計約8000tですが、黒潮が毎年日本に運んでくるウランの量はその600年分以上に当たる約500万tです」(三橋氏)

 

 ウランを海水から採取するコストは年々下がっており、現時点で、海水から取れるウランは市場価格の2倍程度。近い将来、日本はウランの輸出国になる可能性もあるという。

 

 現在、日本の圧倒的な武器は、他国の追随を許さない圧倒的な技術力だ。ナノテクノロジー(原子や分子のレベルで物質を制御する技術)を駆使して作る携帯電話の部品や基板ガラス、半導体の検査器具などは世界で大きなシェアを占め、各国のメーカーから引っ張りだこになっている。

 

ロボットの開発でも、日本は世界の最先端。特に人間に似せたヒューマノイド型ロボットの近年の発達には素晴らしいものがある。

 

 帝京大学経済学部教授の黒崎誠氏が説明する。

 

「日本の潜在的な技術力には大変なものがあります。今すぐノーベル賞をもらってもおかしくない研究者が20人くらいいる。中国や韓国には、今のところそういう人材は見当たりません。日本が世界一のシェアを持っている産業分野も、少なくとも17あります」

 

 黒崎氏によると、意外そうなところでは、高張力鋼(強度が高くて加工性の良い鉄)、種苗、有機EL、内視鏡、大型冷凍庫・・・といった多くの分野で、日本が世界トップクラスの技術水準を保っている。

 

 日本が持つ高度な技術の中には、単なる工業技術にとどまらないものもある。成長戦略総合研究所理事長の山崎養世氏は言う。

 

「日本は必ず世界経済の主役になれる力を持っています。日本の技術には、人類の危機を解決できるものがたくさんあるからです。環境技術の4割〜6割は日本にあるし、ハイブリッド車はトヨタとホンダしか製造できません。電気自動車も最先端は日本です。それらの点で、アメリカや中国は日本に全然追いつけないでしょう」

 

 山崎氏によると、たとえば神戸製鋼所が開発した技術「ITmk3(アイティ・マークスリー)」は、世界の製鉄を一変させる画期的なテクノロジーだという。これによって、従来は捨てられていた質の低い鉄鉱石や石炭が使えるようになるため、コストが下がり、CO2も20%ほど削減できる。鉄不足に悩む人類にとって、救世主のような技術なのだ。

 

 また、発電所が作った電気は、送電の過程でどんどん失われ、アメリカのような広い国では3割くらいしか届かないこともある。この送電ロスをなくす「高温超伝導ケーブル」を事業化したのは世界でただ1社、住友電工だけだという。 

 

「海外に出ない」メリット

 

  日本人の国民性は、世界でも珍しいほど優しくてお人好しと言われる。控えめで、強欲でもなく、わりと素直に謝罪も妥協もする。おそらくビジネスや交渉の場では不利になるはずのこれらの要素は、実は住みやすい社会を作るのに大いに役立っている。

 

 日本を旅した人たちは「なくした財布が戻ってくる信じられない国」と驚きを隠さない。天災が起こって大きな被害が出た後に、略奪が起こることもない。国民の教育程度は高く、読書をする人の割合も先進国ではトップクラス。

 

「新幹線が過密なタイムテーブル通り遅れずにやってくるなんて信じられない」

 

「日本では肉でも魚でも野菜でも安心して食べられるなんて知らなかった」

 

「夜、リラックスして外を歩けるのに驚いた」

 

 ・・・といった声が訪日した外国人からよく上がる。

 

 日本人にはどれも当たり前のことだが、これが当たり前の国の方が少ないのだ。それだけ日本は民度の高い国なのである。

 

 そういう日本人の「人間力」は、アメリカ人や中国人と比べたビジネスのやり方にも反映されている。

 

 百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏によると、アメリカ人は、仕組みがシンプルで大人数が使うものを作り、そこにビジネスモデルの工夫を加えて利益を上げることについては天才的。その典型がグーグルなどITの世界だ。一方で、各国や各地域の特性に合わせて商品を提供することは不得手だという。

 

 中国が得意なのは、主に人海戦術で製造できるもの。電気製品や玩具がそれに当たる。ただし、複雑なプロセスを管理しなければならない分野は苦手だとか。

 

「逆に日本企業は、アメリカや中国が不得手な面に非常に長けています。それは、個々のニーズに合わせて、複雑なものをきめ細かく作っていくということ。この点では世界でも最も優秀でしょう」(鈴木氏)

 

 たとえば、GPSなど高度なIT技術と、日本的な細やかなサービスが合体して実現した宅配便サービスや、店舗運営から物流管理まで高度な仕組みが機能しているコンビニエンスストアのオペレーションなどが良い例だ。他国でも十分通用すると思われる。

 

「コンビニではローソンが海外進出に力を入れ、一部で地元の流通業者を駆逐していますが、他のコンビニももっと海外展開を図るべきです」(鈴木氏)

 

 このように日本国内では、独自の高い能力を備えた人たちがさまざまなイノベーションで新たな事業を起こそうと図っているが、彼らは海外に打って出ないのか。明治大学国際日本学部教授の小笠原泰氏は次のように説明する。

 

「中国の優秀な人材はグローバル化の流れに乗ろうとしすぎて、国外へどんどん移ってしまう。片や日本は、優秀な人でも英語が苦手なことが多く、それほど海外には出て行かない。皮肉なことに、それが今後、日本のポテンシャルを相対的にさらに高くしそうです」

 

 そういう日本の優れた人材は、いわゆる有名企業だけでなく、規模がさほど大きくない会社も、世界でキラリと光る存在にしている。小笠原氏が続ける。

 

「たとえば、高知県で猟銃の製造・販売を行っているミロク。ここよりも精度の高い銃身を作れる会社は、世界におそらく存在しません。他に田中貴金属の金箔や、マブチモーターの小型モーターも、国内外に競合がないほどの技術力。大阪府の川村義肢も、製造する義肢が世界的な高評価を受けています」

 

 小笠原氏によると、今後日本を支える分野になりそうなのは、環境関連の中でも、特に海水を淡水に変える技術だという。現在では旭化成などが世界のトップレベルにある。

 

 今はまだコストが高いため、海水の淡水化は中東の産油国くらいしか顧客になっていないが、これからコストが下がれば、世界中の需要が日本企業に集まってくる可能性が高い。

 

 ただし日本人の能力は、海水淡水化のような大規模な事業やサービスだけでなく、身近なものへの工夫としても発揮されている。その良い例がトイレで使う温水洗浄便座だ。

 

 たとえばTOTOのウォシュレットの場合、現在では世帯普及率が7割を超えたが、そこに至るまでにはおよそ30年の苦闘と改良の歴史があった。

 

「洗浄機能を高めるため、ノズルからシャワーのように水を出すのではなく、大小の水玉を出す『ワンダーウェーブ洗浄』という技法を開発しました。同時に節水機能も強化して、昔は1回の洗浄に約13ℓを使っていたのが、最新型では4.8ℓですみます」(TOTO広報部・山崎千聡氏) 

 

世界一質の高いサービス

 

  日本の強さは、こういった細部にわたる正確さに加えて、気を遣う国民性が生んだ「サービスの質」にもあると指摘するのはセコムPLC(英国セコム)社長の竹澤稔氏だ。竹澤氏はアメリカとイギリスに合計12年間居住しているが、「日本人のサービスの力は世界一」と断言する。

 

「こちら(イギリス)では、電話回線工事の予約や、ボイラー修理の予約を入れても、決めた時間にエンジニアやボイラーマンが来たためしがありません。会社や役所では、どの窓口でも長蛇の列ができている。電車が遅れるのは当然で、郵便もまともに届かない。それと比較すると、日本のサービスの現場力、つまりサービスのオペレーションの力は格段に優れています」

 

 そんな中に日本のサービスを輸出できれば、欧米では向かうところ敵なしのはず。それには、サービスのフィロソフィー(哲学)を輸出して、受け入れられなければならない—と竹澤氏は考え、努力を重ねた。

 

「私どもはイギリスのエレクトロニクスセキュリティ業界で、業績を3位にまで上げました。単にサービスを移し替えるのではなく、フィロソフィーを根づかせ、クオリティ(質)を追求することに努めた結果だと思います。イギリスのセキュリティアラームの同業者の本質は、どこも『ハードウェアを売る会社』なんですが、私どもは『社員全員が命をかけてお客様を守る会社』だと考えています」

 

 日本人は優しい半面、サービスに対する要求や期待が最も大きいと言われる。そんな日本の消費者に揉まれてきた日本企業は、気づかぬうちに、世界でいちばん質の高いサービスを提供するようになっている。そして欧米の消費者も、日本企業のような質の高いサービスがあることを知ったら必ず買う、ということだ。 

日本型経営はしぶとい

 

  一方で、会社というのはいくら高度な技術を持ち、独自のサービスを実施しても、経営者に先見の明がなければすぐピンチに陥る。ジャーナリストの嶌信彦氏が言う。

 

「日本には、20年、30年という長期で先を考え、会社を強くしている経営者がいます。たとえば東芝会長の西田厚聰氏と社長の佐々木則夫氏。特に西田氏はもともと、東芝がイランで現地資本と合弁で設立した会社に採用された人で、夫人がイラン人。こういう現地採用の人材をトップにするのだから東芝も懐が深い。

 西田氏は社長時代の2006年、アメリカの原子力大手ウェスチングハウスを5000億円以上かけて買収しました。『原子力への投資は30年くらい後にリターンが来る』と言ったのですが、普通、経営者はそんな投資はしません。長期計画と言っても、せいぜい5年くらいで、30年後などまず考えない」

 

 西田氏は、20代の社員がベテランになるくらいの時期を見据えて、スケールの大きな投資をしたわけだ。そうすると会社にある種の強固な核ができ、それが長期繁栄を生む。こういうことは、株主重視、短期的利益重視のアメリカ型経営では確かにやりにくい。

 

 西田氏はまた、ブルーレイと競争したHD-DVD事業からも、負けるとわかるとすぐ撤退した。嶌氏はこの決断も高く評価する。ちなみに当時、下がるかと思われた東芝の株価は、西田氏の決断力を市場が評価して、逆に上がっている。

 

 もちろん、経営者の仕事は、有望な案件への投資だけではない。個々の社員が力を発揮できるような組織作りも大切な役割だ。どんな組織統制のもとで、日本人は力を発揮するのか。

 

 元ソニー上席常務で作家の天外伺朗氏は言う。

 

「今後の日本企業で生き残るのは、『フロー経営』で『燃える集団』を実現する会社です。燃える集団とは、上からの統制が弱く、社員一人一人がスーパーマンに変身して全力疾走し、会社全体の業績を伸ばしていく組織のこと。ムカデ競走のように、皆が足を結んで同じ方向に走る合理主義的なやり方とは正反対です。

 

 フロー経営とは、『組織の壁や上下関係を希薄にする』『社員を徹底的に信頼し、決定を現場の自主性に任せる』『なるべくルールを減らす』『情報をすべての社員に公開する』など、社員の人間性を重視して行う経営です。サッカーの岡田武史前日本代表監督は、'07年に私の経営塾で学ばれ、南アW杯で『燃える集団』の実現に成功されました」

 

 天外氏によると、すでにフロー経営で成功している日本企業は、岐阜県の電設機器メーカー「未来工業」や高知県の自動車ディーラー「ネッツトヨタ南国」、京都府の古着屋チェーン「ヒューマンフォーラム」など。

 

 未来工業の給与体系は、成果主義でなく年功序列で、年間の休暇は140日。残業もない。それでも高収益を確保している。ネッツトヨタ南国は、この業種では最も従業員の定着率が良い。顧客満足度が高く、リーマンショック以降の不況の中でも売り上げを伸ばした。

 

「実は創業から1995年頃までのソニーも、全社的にフロー経営で業績を伸ばしていました。私もその中で、CDやワークステーションNEWS、犬型ロボットAIBOなどを開発したのですが、'95年に経営者が替わり、アメリカ流の合理主義経営に転換して、ソニーは普通の会社になってしまいました」(天外氏) 

 

新しい成長分野もぞくぞく

 

  日本の底力は、独自のオタク的カルチャーと経済が連動している点にもある。経済評論家の森永卓郎氏によると、日本はポケモンやハローキティに代表される「カワイイ」ものを作り、それをゲームやフィギュア、アパレル、文房具など多数の商品に発展させるところが最大の強みだという。

 

「『カワイイ』文化の延長上に、ここ10年くらい、『萌え』と呼ばれる分野が発展しました。簡単に言うと、漫画やアニメなど、2次元の存在に対して人に恋愛感情を起こさせて成立するマーケットです。そういうものを開発できたのは日本だけで、そこから発展した商品がアジアをはじめ、世界各地を席巻しているのだから大変な武器です」

 

 そして東京・秋葉原に行くと、「萌え」系の他に、ある種の店舗が急速に増加していることに気づくという。アダルトグッズの店だ。

 

「このアダルトグッズの分野でも、日本は世界でぶっちぎりの競争力を持っています。秋葉原に来る中国人観光客は結構アダルトショップに行っていて、一人で30万分くらいのグッズを買っていく人もいます」

 

 森永氏は先日、その一軒で「これがあれば生身の女性は要らないんじゃないか」と思えるくらい完璧な女性器のグッズを見つけ、びっくりしたという。そのグッズは、かなり人気を集めている様子だったとか。

 

 こうして日本独自のセックスカルチャーと精緻な技術力が結びついて、新しい成長分野になりそうだ。

 

 もちろん「カワイイ」系や「萌え」系を世界にアピールすればそれでよいわけではない。アーサー・D・リトルでアソシエート・ディレクターを務める川口盛之助氏は言う。

 

「『キャプテン翼』『セーラームーン』『ドラゴンボール』といったアニメ作品は世界的に大人気ですが、関連ソフトやキャラクター商品を作って海外で売って終わり、というのではあまりにも表層的です。大きな利益や雇用を生むには、それを深いレベルで製造業に生かさなければなりません。

 たとえば孫悟空(『ドラゴンボール』の主人公)や大空翼(『キャプテン翼』の主人公)のキャラクターに重なる車はどう作ったらいいか、どんな機能を搭載すべきか・・・といったことから発想していくのです」

 

 こうして日本のアニメ風の製品が市場に投入されれば、アメリカ、アジア、ヨーロッパと、膨大な数のファンを顧客としてがっちり押さえやすくなる。

 

 しかも、日本のアニメなどが好きな海外の若者や子どもたちは、どんどん大人になってお金も使うようになる。その彼らが買ってくれる製品を作り続けるのは、「ある意味で、ハリウッドをずっと宣伝に使える以上の絶大な効果があるかもしれない」(川口氏)のだ。

 

 日本人と日本企業が持つ巨大な潜在力。では、それを活用して世界のトップランナーに返り咲いた後、私たちは何をすべきなのか。アシスト社長のビル・トッテン氏は言う。

 

「近い将来、世界経済は半分程度の規模に縮小すると思います。それは第一に、過去200年続いた『化石燃料に依存する経済』が終焉するのに、代わるものがないから。第二に、今の経済の大部分は、広告の力で無理やり作られた需要ばかりのインチキなものだから、崩壊してしまいます。

 

 その中で、日本企業は伝統的な強みを維持していけばいい。その強みとは、開発や製造のための先端技術と、人間を大事にする経営です。そうすれば、良質の製品を低価格で提供し、高賃金の雇用を生み出して、国民の幸福と健康と豊かな生活に貢献するという使命を果たすことができます」

 

 他国との比較に一喜一憂せず、やるべきことをやれば、日本はまだまだ強い。