マルクシズムの起源 5


マルクスはこの段階ではまだ社会主義を信じていなかった。
彼を社会主義者に変えたのは、モーゼス・ヘスである。
ヘスは、マルクスについて次のように述べた。


マルクス博士は私の偶像である。彼は、中世の宗教と政治に最後の一撃を加えるだろう。
(Moses Hess, letter of September 2, 1841 to Berthold Auerbach, MEGA, I, I (2), p. 261; cited in ibid., p. 24.)24

当時マルクスの友人であったゲオルグ・ユングは、1841年に、マルクスが目指していたのは、天から神を追い出し、訴えることである、と述べた。マルクスはキリスト教を最も不道徳な宗教であると言った(Ibid., Georg Jung, letter of October 18, 1841 to Arnold Ruge, pp. 261, 262; cited in ibid., p. 24.)。

一般に、「マルクスは、人類を救うための高貴な社会的理想を抱き、その目標の達成を邪魔する宗教を嫌悪した」と考えられているが、真実はまったく逆である。マルクスはまず、神や神々の概念を徹底して嫌悪したのである。彼が社会主義を唱える前に、すでに、彼は神を排除しようと心に決めていたのであり、社会主義とは、プロレタリアートや知識人をひきつけ、彼らを通じてこの計画を実現するための餌でしかなかったのである。

世界から神を排除し、そこに「人間だけで完結する世界」を築くことこそ、彼の第一の目的だった。

社会主義者にとって、いわゆる世界史の全ては、人間の労働を通じて成し遂げられる人間の創造、及び、人間のために行われる自然の開発以外の何物でもない。それゆえ、社会主義者には、人間が人間自身から生まれることを示す確実な証拠がある。…宗教批判は、「人間は、人間にとって至高者である」という教えに帰結するのである。

ソ連は、初期のころ、「資本主義者を地上から、神を天から追い出そう」というスローガンを採用した。

神が否定されれば、人間に命令を下す者は誰もいないことになる。人間は、誰に対しても責任を負うことがない。それゆえ、マルクシズムにとって道徳は存在しない。マルクス自身「共産主義者は、この世に道徳などまったく存在しないと主張する」と述べている。

社会主義革命の第一の意図が、宗教的な部分にあったことを示しているのが、第一インターナショナルをマルクスとともに設立した友人ミハイル・バクーニンである。バクーニンは次のように述べた。

サタンは、永遠の反逆者、最初の自由思考者、世界の解放者である。彼は、人間が、獣のように無知で従順な自らの姿を恥じ入るように仕向けている。サタンは人間を解放し、その額に自由と人間性の印を押し、反逆を促し、知識の実を食べるよう駆り立てる。
(Mikhail Bakunin, God and the State (New York: Dover Publications, 1970), p. 112; cited in ibid., p. 27.)

バクーニンにとって革命とは、建設ではなく、一方的な破壊である。

この革命において、我々は人々のうちにある悪魔を目覚めさせ、最も卑しい欲情を掻き立てなければならない。我々の使命とは、破壊であって、変革ではない。
(Roman Gul, Dzerjinskii, published by the author in Russian (Paris, 1936), p. 81; cited in ibid., p. 27.)

彼は、当時マルクスの友人であった社会主義者プルードンも「サタン崇拝者」であると述べた(Hans Enzensberger, Gesprache mit Marx und Engels (Frankfurt-am-Main: Insel Verlag, 1973), p. 17; cited in ibid., p. 407.)。ウァームブランドによれば、「プルードンは、マルクスと同様、悪魔教の一派ジョアンナ・サウスコットの典型的な髪型をしていた」(Op.,cit., p. 27.)。
プルードンは、著書The Philosophy of Miseryの中で、神こそ不義の典型であると述べた。

神がいなくても、我々は知識を得られるし、社会を建設できる。一歩前進するたびに、我々はそれだけ神に勝利しているのである。
(Pierre-Joseph Proudhon, Philosophie de la Misere (Paris: Union Generale d’Editions, 1964), pp. 199, 200; cited in ibid., p. 28.)

来い、サタン。小さい者や王たちに中傷されている者よ。神は愚かで臆病。神は偽善者で嘘つき。神は独裁者で貧困。神は悪。祭壇の前で跪く時、王や司祭の奴隷なる人類は非難にさらされる。…私は手を天に伸ばし、誓って言う。神よ、おまえは、私の理性の処刑人…でしかない。…神は、本質的に文明と自由と人間の敵である。
(Ibid., pp. 200, 201; cited in ibid., p. 28.)

プルードンは、人間が悪なので、その創造者である神も悪だ、と宣言する。このような考えは、彼の独創ではない。サタン崇拝において、このような教えは普通に講壇から語られるからである。
マルクスは、後にプルードンと喧嘩別れし、この著書を批判する本を出版するが、経済理論における小さな違いを批判しただけで、その本質部分(つまり、反キリスト教)に反対していない。






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2004年1月23日

 

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